プログラミング教育の基礎知識 現状と教育現場での課題
例えば実際にプログラミングを体験しながら、コンピューターに意図した処理を行わせて、論理的思考力を身に付けるようなカリキュラムが想定されています。
また、独立した科目としてプログラミングの授業があるわけではなく、算数など既存の教科の中で指導していくことが前提となっています。この背景には、プログラミング教育によって各教科の学びをより確実なものにすることも折り込まれています。
中学校におけるポイント
中学校におけるプログラミング教育のポイントは、技術・家庭科で情報セキュリティーに関する分野を充実させている点です。
また、2021年度にスタートした新学習指導要領では、これまでになかった「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題の解決」という部分が改訂されました。
これまでのような専用のソフトウェアを使ったプログラミングだけではなく、入力した情報に対する応答をネットワークを利用して行うようなプログラミングも指導内容に組み込まれています。例を挙げると、AIによる画像認識技術で、社会問題の解決のためのコンテンツを作る授業などが想定されています。
このように実生活や社会における問題解決に結び付いた学習の中で、プログラミング的思考を身に付けていくのが、中学のプログラミング教育の特徴です。
高校におけるポイント
高校におけるプログラミング教育のポイントは、必修科目として「情報Ⅰ」が新設される点です。
加えて、選択科目として「情報Ⅱ」が用意され、専門的な技術・知識を深めたい生徒がより発展的なプログラミングを学べるように設計されていることも特徴です。ここではネットワークやデータベースの基礎を学ぶことができるだけではなく、重要視されている情報活用能力を伸ばすカリキュラムが想定されています。
さらに2021年3月に、独立行政法人大学入試センターは、2025年の大学入学共通テストから受験科目に「情報」が加わることを発表しました。
公開されているサンプル問題には、通信の仕組みやネットワークについての理解を問うもの、情報をロジカルに分類するプログラミング的思考を問うものなどがあります。
プログラミング教育の現状と課題

ここからは、プログラミング教育の現状と課題について解説をしていきます。
設備の導入
文科省は、GIGAスクール構想を精力的に進めており、ほとんどの公立小・中学校では1人1台のICT機器が整備されました。
また、学校内のネットワーク環境の整備についても、2020年度内に86.2%、2021年度から97.9%の学校でネットワークが整備完了される状況です。ただし、GIGAスクール構想は小・中学校が対象なので、高校では生徒1人ひとりに端末が支給されていなかったり、ネットワークが整備されていない学校もまだ多いのが現状です。
教員
現場で指導に当たる教員の立場でも、いくつかの課題を抱えながら進めているのが現状です。
人員・知識の不足
1つ目の課題として、知識の不足が挙げられます。
文部科学省が2018年に各自治体の教育委員会に対して行った調査によると、各教育委員会、管轄の小学校・教員が抱えるプログラミング教育の課題として「ICT支援員の不足」(80.6%)、「指導方法の情報不足」(75.4%)という回答結果が出ています。