歴史学べるYouTube「現役ムンディ先生」人気の訳 「授業ノウハウが詰まった動画」社会人にも好評

「それはありません。勤務校で採用している教科書や、生徒の実態に合わせなければなりませんから。授業は、その学校で採択した教科書を使い、生徒の実態や活動に合わせています。動画のノウハウを授業に生かすということはなく、むしろ授業で培ったノウハウを動画で生かしています。2020年のコロナ禍ではZoom授業も行ったのですが、通常の対面授業でも、授業動画でも、Zoom授業でも、大切なことは同じ。きちんと相手を意識して話すことです」
実際の授業では、目の前に生徒がいる。生徒が何に関心を持ちやすいか、どこでつまずいているかをリアルタイムで確認し、時には生徒同士で話し合う時間も設ける。そうした経験の一つひとつが教員の中に蓄積されていく。授業動画を制作する際に、その蓄積が生きてくるのだという。
「予備校の先生やほかの教育系YouTuberの方が教える対象は能動的に学ぼうとしている人ですが、学校教育の場合、そうとは限りません。そこで、私たちは勉強が苦手な生徒やその教科が嫌いな生徒がどうすれば理解できるかをつねに考え、生徒とコミュニケーションを取りながらノウハウを積み重ねています。だからこそ、もっと多くの教員が授業動画の配信を行って、そのノウハウを表に出していったらいいと思うんです」
動画から生まれたコミュニティー
学びを必要としているのは高校生だけではない。山﨑氏のYouTubeチャンネルには小中学生から高校生、大学生、社会人、現役教員まで幅広い人々がアクセスし、視聴している。
「社会科を学ぶ必要性は、社会に出てから増してくると思います。学校で世界の歴史や金融について学びますが、実際に社会に出て金融に携わったり、違う文化を持った外国の人と仕事をして、『もっと勉強すればよかった』という欲が出てくるもの。むしろ社会人のほうがもう一回学び直したい、体系的に勉強したいという気持ちになるのでは」
そう語る山﨑氏の今の目標は、世界史・日本史と同じく、地理でも200本の動画をアップすることだという。
「もう一つ、私の動画を見てくださる方とのコミュニティーを育てていきたいですね。コロナが収まったら、授業動画に出てくる場所へみんなで旅をしたり、博物館に行けたらと思っています。動画配信を通じて全国の先生とのつながりもでき、コロナ禍前は東京や札幌、新潟、大阪など各地でオフ会も行っていました。そのコミュニティーでは小中学生から高校生、大学生、社会人やたくさんの先生方がいて、横のつながりを持つことができています」
学校という枠を超えて形成されているコミュニティー。その中で情報交換をしたり、新しい科目である「歴史総合」をどう教えていくかを相談できるのも強みだという。
生徒の補講や自習だけでなく、社会人の学び直しや教員の学びにもつながっている授業動画。現役教員の授業動画の充実は、今後さらにさまざまな波及効果をもたらしていくことだろう。
(写真はすべて山﨑氏提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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