子どもの「人生の選択肢」無意識に狭まる大問題 地方の限界を打開する「現代版寺子屋」の正体

地方の子どもの「第3の居場所」をつくる
生まれ育った環境によって、学歴などの教育成果に違いがある教育格差は、日本においても深刻な問題だ。
日本では、どこでも一定水準の教育を受けられるよう学習指導要領があり、居住地によって受けられる教育に差が出ないよう自治体への財政支援もあるから、教育機会は均等だと思われがちだ。しかし実際は、家庭環境のほか、地域間でも教育格差は存在する。

1970年、神奈川県横浜市生まれ。上智大学卒業後、伊藤忠商事に入社し、アジアで空港・地下鉄等のインフラプロジェクトに携わる。2000年にウィル・シードを設立し、350社を超える企業および60の自治体、600の学校に体験型の教育プログラムを提供。09年、世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出。11年以降にTABLE FOR TWO International理事、MORIUMIUS理事、BEYOND TOMORROW共同代表理事等を歴任。14年、日本のグローバル人材の育成を目的とした官民協働留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」のプロジェクトディレクターに就任。19年Asian Leaders Connecting Hubを設立、CEOに就任
(写真:船橋氏提供)
大学への進学で言えば、親や近隣住民など身近な人に大卒がいない地域で育った子どもは、そもそも将来大学に行くという意識がないことが多い。大学進学以外でも、都市に比べてロールモデルが少ない地方では、無意識のうちに人生の選択肢が狭まってしまうことがあるのだ。こうした問題意識が、あしたの寺子屋創造プラットフォームの立ち上げにつながったという。
「今、日本には人口3万人未満の町村が、約1000あるといわれています。3万人規模ではビジネスが成り立ちにくいため、大手学習塾が参入することはほとんどありません。すると、小中高生の居場所の多くは学校と家庭になります。学習に対する意欲が高い子や支援が必要な子、不登校の子、家庭に居場所がない子の受け皿がないのが実情なのです。そうした地域に『第3の居場所』として寺子屋を、また自分の地域以外の同世代やロールモデルとオンラインでつながるネットワークをつくろうというのが、あしたの寺子屋の構想です」