「AI時代」を生きる子どもたちに必要な4つの力 「数理・データサイエンス・AI」誰もが学ぶ社会へ

文理を問わず、すべての大学・高専生(年間約50万人)が、初級レベルの「数理・DS・AI」を身に付けるという目標については、国が「数理・DS・AI教育プログラム認定制度」を構築して後押しする考えだ。「リテラシー」レベルでは、裾野を拡大するため書類審査で認定する「認定教育プログラム」と、もう1段階上のレベルの「認定教育プログラム+(プラス)」を展開する。認定制度の狙いについて、安西氏はこう説明する。
「全国の大学において、とくに文系の学部生もきちんと学んで単位が取れる体制にしたい。履修した学生を採用で優遇するなど、学生が経歴に書ける形になるよう経済界にもかけ合っているところです。そうなれば、広くAI教育が行き渡る流れができると考えています。募集要項は今年度中に出て、21年度内に運用が始まる予定。現在は、『リテラシー』レベルの上の『応用基礎』レベルの認定制度を検討中で、21年度中の募集開始を目指しています」
AIを使いこなすために必要な4つの力
「応用基礎」レベルでは、文理を問わず、一定人数の大学・高専生(年間約 25 万人)が、自らの専門分野への「数理・DS・AI」の応用基礎力を学べるようにすることを目標としている。よって、「経済学×AI」のようにダブルメジャーを目指すコース創設も考えられる。
さらに、「エキスパート人材」(年間約 2000 人、そのうちトップクラス年間約 100 人)を育成し、彼らがイノベーションの創出に取り組むことのできる環境を整備する。ここまで挑戦的な目標を設定する背景には、DX(デジタルトランスフォーメーション)などによる急激な社会変化がある。
「とくに高校生から大学生の間にしっかりDSとAIを身に付けておくことが、将来食べていくための大切な力になっていく時代。個人だけではなく、日本が世界の中でやっていけるのかということにも関わります」
しかし、時代の要請という現実的な側面があるのは事実だが、AI人材で育成したいのは、単に技術力のある人間ではないという。

「AIがあろうとなかろうと、どんな時代でも求められる人材像はそんなに変わりません。大切なのは『主体性』『思考力』『感謝する心』『実行力』。日本の教育はこの4つの力を身に付けられる教育に転換しなければいけません。ICTは、これらの力を伸ばしてくれる『道具』です。また、こうした力が基盤になければAIを使いこなすことはできません」
教員に求められる3つのこと
では、現場の教員にとって大切なことは何だろうか。
「3つあります。1つ目は、やはり先ほどの『4つの力』。ここを意識した学びを展開してほしい。とくに小・中・高等学校の教員に大事にしてほしいと思います。具体的には、ICTを活用し、子どもたちが主体的にデータを取りにいけるようにすることがポイント。
例えば、登校時にどこに注意すればいいかという課題があったとします。車の交通量や人がどう歩いているかを調べようと思っても、あらゆるデータを取ることはできません。どこに絞ってデータを取るのが適切かということを、自分で考えて判断する必要がある。いわゆる問題解決力や問題設定力といった力ですが、小学校の段階から養成したい。町田市立町田第五小学校のICT活用などが好事例ですが、子どもたちはやってみるとできるのです。