「公立は制約多い」を覆す、日比谷高校の突破力 名門復活の立役者、武内校長の迅速コロナ対応
「オンライン授業は、一定の知識を効率よく伝達するのに優れていると考えます。実際、授業では生徒間の対話を積極的に実施していました。“ブレイクアウト・セッション”と称し、Zoomでクラス内を3人ずつのグループに瞬時に分け、生徒たちに対話を促すなど、話し合いができる点がよかった。
一方、本校ではセキュリティーを確保するため『ビデオを停止』して授業に参加させています。教員は、生徒の顔が見えない状態で授業しているのです。しかし、それでは生徒の様子や反応がわからない。そうしたやりづらさが教員にはあったと思います」
こうして何とか難しい局面を、見事な突破力で乗り切った日比谷高校だが、制約が多いといわれる公立校で、なぜスムーズにオンライン教育を実施できたのだろうか。武内氏が言う。
「“すべての責任は校長が取る”と言ったことは大きいと思います。オンラインで何か不具合が生じたり、セキュリティー上問題があったりした場合、職を辞するという形で責任を取るとプロジェクトリーダーに宣言しました。それが教員たちが動く決定打になりました。また、本校のミッションを理解してくれた教員たちが迅速に動いてくれたことも重要でした。どちらが欠けても駄目だったと思います」
さらに、東京都教育委員会がサポートしてくれたことも大きかったという。学校の事情を把握し、教員の勤務形態についても柔軟に対応。オンラインの運用では担当者を派遣し、そこで試験的に行われたことが、その後、ほかの都立高でも共有されたという。
日比谷高校では6月29日から対面授業に切り替わったが、これからのオンライン授業について武内氏はどのように考えているのだろうか。
「基本的に教育効果として大きいのは、やはり対面授業です。対面授業に代わるものはないと認識しています。全面的な対面授業が許される限り、そちらを最優先で実施していきたい。今後は土曜講習、冬期・春期の講習、または保護者会など一斉に集まることが困難な場合などに、オンラインを活用していきたいと考えています」
とはいえ、これから都立高校ではマイクロソフトのTeamsの導入を予定している。11月には本アカウントの配備が完了するというが、東京都主導のICT支援講習なども順次スタートする予定という。日比谷高校といえば、ほかの都立高校のみならず他県の教育委員会からも視察が相次ぐ模範校だ。今後の取り組みも目が離せない。
(撮影:尾形文繁)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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