パックン流、考える力を深める対話と交渉術 教室をクリエーティブな場にする新たな学び
子どもが自分で考えるまで待ち、受け止める。こうしたやりとりは、親にとっても根気がいること。親が決めたことを押し付けるほうが簡単かもしれない。
「僕も権力で押し付けてしまうことは結構ありますよ」とパックン。必ずしも、すべてが理想どおりに運ぶとは限らない。親も人間だから、完璧ではない。だからこそ、気をつけていることがあるという。
「子どもとの対話のタイミングですね。眠いときやお腹が空いていると、けんかになりやすいので、微妙な交渉はご飯の後にやるとかね。そして、もう1つは交渉の結果がウィンウィンになること。親から見て大事なことだけでなく、子どもから見て大事なことが何か、ちゃんと聞いてから交渉に入ります。ウィンウィンってそういうことだから」
例えばテレビゲーム。子どもはテレビゲームがやりたいが、親としてはなるべくやらせたくない。そこで、「どうしてテレビゲームで遊びたいのか」と聞く。その答えが「映像の刺激が欲しい」なら家族で映画を見ればいいし、「勝ち負けの勝負ごとがしたい」ならばほかのスポーツやゲームをすればいい。こうした対話を通じて、自分は何がしたいのか、どういった喜びを得たいのか、を考えるようになる。すると、そこでたどり着いた本質的な目的に沿って子どもの希望と親が許容できる妥協点を探すことができるだろう。
「ところが先日、『新型コロナで友達に会えないからオンラインゲームで交流したい』と言ってきたんです。僕は子どもが友達と交流するのは大賛成。そうした社会的な一面が失われるくらいなら、オンラインゲームと抱き合わせにした方がいいと思いました。そこで、『ゲームで交流する』を親子の妥協点にしました。対話をしていると、子どもは意表を突くことを言ってきます。それがすごく面白いんですよ」
パックンは、家庭で実践している金融教育も対話を重視。しかも、できるだけ包み隠さずにストレートに物の値段と価値の関係を伝えているという。例えば、一緒に買い物に行ったときなどに、「何で同じ品物なのにこっちのほうが高いと思う?」などと、普段から質問形式で進めるのがパックン流だ。

1970年生まれ、アメリカ出身。ハーバード大学比較宗教学部卒業。93年に来日し、97年にお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。2012年から東京工業大学にて非常勤講師を務める。おもな著作に『パックンの「伝え方・話し方」の教科書 世界に通じる子を育てる』(大和書房)、『ハーバード流「聞く」技術』(角川新書)。
英語は特別、という意識をなくすには
子どもと一緒に考えることもディスカッションも大好き、と話すパックン。タレントとして活躍する一方、2012年からは東京工業大学で非常勤講師として国際社会とコミュニケーションの講義を担当している。