市場の焦点は参院選と米国利上げにシフト 急減速した米国雇用者数は勢いを取り戻すか

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そのなか、7月8日に米6月雇用統計が発表される。イエレン米FRB議長も経済指標が改善すれば「7月の会合での利上げも不可能ではない」、急減速した雇用情勢も「引き続き改善すると見込んでいる」と述べている。仮に雇用者数が勢いを取り戻して賃金の底上げ等が重なれば、7月26~27日の米FOMCにおいての利上げは「可能性ゼロ」と言い切れないだろう。6月16日の日経平均株価は1万5434円まで大きく調整した。ただ、テクニカル面では売られ過ぎ、バリュー面では割安感を示す指標もみられる。弱含んでいた日本株が足元では1万6100円台まで持ち直す動きとなってきた。

テクニカル面では日経平均株価の「年間騰落率」と「25日線かい離率」が挙げられる。まず、1990年以降の日経平均株価を振り返ると、下落した年の平均下落率はマイナス18.8%。ちなみに2015年末値(1万9033円)に当てはめると1万5454円になる。6月16日は年初来マイナス18.9%と、売られ過ぎの水準に達していた。

投資家の知力が試される局面に入る

次に25日線かい離率。通常、日経平均株価は25日線を中心にプラス5~プラス7%を買われ過ぎ、マイナス5~マイナス7%を売られ過ぎとしている。2015年夏以降の日経平均株価は大きく下振れしているものの、おおよそマイナス7%超になると下げ渋っている。6月16日にはドル円が一時103円台まで円高が加速、日本株は全面安となった。ただ、日経平均株価の25日線かい離はマイナス6.8%と、短期的に売られ過ぎの水準に近づいていた。

バリュー面でも、解散価値といわれる株価純資産倍率(PBR)1倍水準(1万4700円前後)に近づいている。一方、6月以降、下値では日銀が上場投資信託(ETF)を継続して買い入れている。仮に過度なリスク回避や円高進行が落ち着けば、売り一巡感から買い戻しが強まり、3月月中平均(1万6897円)まで戻りを試す展開も想定される。

以上のことから、日本株はテクニカル面でもバリュー面でも調整一巡感が台頭しつつ、1万6000円割れは短期間にとどまっている。足元では徐々に反発局面へ転じてきているなか、英国に対する一喜一憂(Brexit or Bremain)から株価のフェアバリューを問う投資家の知力(Brain)が試されそうだ。今後、市場の焦点は日本の参院選と米国の利上げ等へ移行していこう。

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中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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