800mをつなぐ「蒲蒲線」に期待が集まるワケ その効果は羽田アクセス強化だけではない

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蒲田は、商店街の発展した街である。再開発もすすめられており、京急蒲田駅が高架化・重層化してから新しくまちづくりを行った。大田区まちづくり推進部の町田達彦・交通企画担当部長は「鉄道をきっかけに、まちづくりも連動させていきたい」。樋口さんも「蒲蒲線には、さまざまな波及効果がある。大田区全体に、新たに人が流れるようにしてほしい」と語る。

すでに、実際に駅を作る際のこともある程度考えられている。京急蒲田駅の地下に作る駅では、エレベーターやエスカレーターなどを完備し、人の動きがスムーズになるように構想しているほか、東急多摩川線については東横線との接続駅である多摩川駅から東横線への乗り入れも計画している。また、蒲田駅と京急蒲田駅の間には広い道がないため、工事の際にはシールド工法でトンネルの掘削を行うことも決まっている。

「地域の合意が大事です。区内の各方面の皆様とも連携して、まちづくりについての協力もお願いしたい」と町田部長はいう。

大田区関係者の中には、さまざまな構想がある。しかし、単純に東急多摩川線を延伸して蒲田駅と京急蒲田駅を結び、駅施設を整備して空港に向かう人の流れをスムーズにするだけでも、蒲蒲線計画の意義は大きい。

注目点は「答申に盛り込まれるか」

蒲蒲線が答申に盛り込まれることを、大田区と区民は期待している。大田区は東京急行電鉄と協力し、区民などから募集した絵画と標語を車体に描いたラッピング電車を2015年12月から東急多摩川線、池上線で走らせている。

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東急多摩川線・池上線を走る蒲蒲線ラッピング列車のお披露目会。車体に区民などから募集した絵画や標語を描いている

2015年12月20日に行われたラッピング列車のお披露目会で、絵画コンクールの最優秀賞を受賞した上田ひなたさんは「新空港線を想像してわくわくする。実現したら空港が身近な存在になる」。

標語で最優秀賞に輝いた「つながり はばたけ 新空港線」という臼井正一さんの作品は、たった800mをつなぐことで、大田区が、そして東急多摩川線とつながる多くの路線が羽田空港につながり、多くの人が世界にはばたいていくというイメージだ。

松原忠義大田区長はお披露目会の際、「つながることで大田区の再生を、新産業の創造を実現したい」と述べ、「30年間蒲蒲線のための運動を続けてきた。なんとしても実現したい」と力を込めた。さまざまな構想は、レールを結ぶことから花開く。空港アクセス交通だけでなく、大田区の未来、蒲田地域の未来に向け、地元は蒲蒲線計画に期待を寄せている。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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