
国内大学を取り巻く厳しい環境と財務戦略
国内大学を取り巻く環境は、かつてないほど厳しさを増している。18歳人口減少、国からの運営費交付金減少、寄付金や外部収入などの収入面の不確実性に加え、物価上昇・人件費高騰、法令対応や社会的要請への投資といった支出圧力も重なる。
大学が「教育と研究」という本来の使命を果たしつつ持続可能であり続けるためには、従来の予算重視型の運営を超え、適時で戦略的投資を拠出できる強い財務基盤の構築が不可欠である。強い財務基盤の実現に必要な三本柱を提示したい。
最初が管理会計を基軸としたエンダウメント型経営だ。これまで筆者が支援してきた多くの大学が、運営を「年度当初に設定した予算をいかに使い切るか」という発想になりがちで、予算配分も経験や前例に依存するケースが散見された。
しかし大学の規模縮小や外部収入増加といった不確実性を踏まえると、早く正しく判断する力がその大学の生き残りを直接左右する。求められるのは、①財務データを組織やプロジェクト横断でタイムリーに比較・分析できる基盤の構築(多くの場合、システム内でのマスタ再構築やデータ整備が必要)と、②非財務データを含めたデータの利活用により施策単位で投資利益率(ROI)を可視化し、スクラップ&ビルドを実行できる環境である。