深刻化する最貧国の経済、日本は支援で指導力を 国際開発協会めぐる増資の行方と日本の役割

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世銀は高まる資金需要に対応するためにIDAの融資能力の強化を計画しており、過去最高だった前回増資の930億ドルを上回る支援額を目指している。しかし、主要ドナー国がそれに見合う資金を拠出するかは不透明である。

アメリカは、トランプ氏の再選ばかりが注目されているが、IDA21との関係では、大統領選と同時に実施された連邦議会選において、上院下院とも共和党が多数派を奪還したことのほうが大きな意味を持つ。すなわちアメリカでは議会が予算編成や立法の権限を持つので、トランプ氏と一体となった共和党議会が、IDA21に対する拠出額を大幅に減らしてくる可能性がある。

同じく主要ドナー国であるイギリスは、IDA20において大幅に拠出額を減らした関係で、前回比では拠出額を増やしてくると思われるが、14年ぶりの政権交代がどのような影響を与えるか不明である。また、7月の下院選挙の結果、左派連合が最大勢力となったフランスの動向も読めない。

グローバルサウス支援の正念場

アメリカ以外の多くのドナー国は、財政、自国通貨安の問題を抱えている。日本も通貨安がハードルになる。円ベースで前回増資と同額(約3767億円)を拠出したとしても、前回増資の円ドルレートは1ドル約110円であったのに対して、今回の増資では150円程度が基準になるので、ドル換算での拠出額は低くなってしまう。

IDA21では、世銀が自ら資金を負担する姿勢を示し、前回増資を上回る資金規模の実現を目指しているが、ドナー国も相応の貢献が求められる。自国通貨安の問題を抱えているドナー国も、前回よりも少しずつ多くの拠出をすることが期待されている。

2国間の援助では存在感が発揮しづらくなっている中、IDAは日本がグローバルサウスからの信頼を得るための重要な手段となっている。IDAの重点政策には日本の意向が反映されているが、この関係を維持するためにはドナー国間の出資割合を維持することが不可欠である。

日本政府には、IDA21においても、アメリカに並ぶトップドナー国としての地位を堅持することを期待する。

塩崎 恭久 元内閣官房長官

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しおざき やすひさ / Yasuhisa Shiozaki

しおざき・やすひさ●一般財団法人勁草日本イニシアティブ代表理事。1975年日本銀行入行。1993年衆議院議員初当選。内閣官房長官、厚生労働相などを経て、2022年から現職。

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