神田前財務官「国益を背負うトレーダー」として 【前編】円安阻止の「為替介入」舞台裏を語る

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――円売り介入であれば無限に行える一方、円買いの原資は外貨準備200兆円という限度があると指摘される。

神田 200兆円あれば十分だ。しかし、介入に全部使うのは、キャピタルフライト(資本逃避)が起き、資本規制を行わなければならないような末期的な状況だろうから、まったく想定していない。

逆に、「円買い介入の原資は無限」(*2022年10月20日の発言)であることも嘘ではない。手の内は明かせないが、資金調達の方法はいろいろある。ヒントをあげると、外貨準備が枯渇しつつある国々が、為替介入を継続している。日本も容易に外貨準備を超えた調達が可能だが、そんな異常なことを想定する必要はない。

「駅では立ち位置に気をつけろ」

――介入とみられる大きな値動きを見ると、市場の取引が薄い時間帯だったり、断続的に円買いが入った模様だったりする。介入効果を最大化する戦術があったのか。

神田 介入する以上は勝たなければならない。1992年に英国ポンドがジョージ・ソロスにやられた時のようになってはならない。私は20年以上、毎日マーケットを見てきた自負はある。

しかし、言ってみれば、国益を背負いつつも、市場に謙虚に向き合う一人のトレーダーにすぎない。自分なりに必勝の戦術をその時その時、状況を見極めつつ考えて指示した。それ以上は言えない。

ただ、介入で相場が大きく動いたのは、私の円買いトレードに多くのファンドが追随したからだろう。いわゆるバンドワゴン(多数派に乗る)効果だ。ある推計だと、介入に併せて数十兆円が動いていたという。狙ったわけではないが、介入が奏効した1つの要因だといえる。

プロの市場参加者の間では、私の介入によって相場の急変動がスピードダウンするだけでなく、相場のトレンドが反転するところが怖さだといわれている。介入はあくまでファンダメンタルズを離れた過度の変動を止めるものだが、それまで円売りでリターンを得ようとしていた投機筋が「早く損切りしなければ」と慌ててポジションを閉じようと殺到するので、結果的に反転したのだとの声だ。

円売りに張っていた投機筋は、トレンドが反転して大損を出した。だから私はかなり恨まれているそうだ。駅では立ち位置に気をつけろといわれたこともある。(インタビュー後編に続く)

黒崎 亜弓 東洋経済 記者

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くろさき あゆみ / Ayumi Kurosaki

特に関心のあるテーマは分配と再分配、貨幣、経済史。趣味は鉄道の旅、本屋や図書館にゆくこと。1978年生まれ。共同通信記者(福岡・佐賀・徳島)、『週刊エコノミスト』編集者、フリーランスを経て2023年に現職。静岡のお茶屋の娘なのに最近はコーヒーばかり。

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