「リアルいじめ」と強い相関、学力上位層の高校生「ネットいじめ」が増えた理由 背景に「環境変化によるストレス」や「いじり」
原氏らが行った大規模調査の対象は高校生だが、こうしたネットの文化は伝播しやすく、下の世代の中学校や小学校でも同じ傾向が見られるのではないかと原氏は危惧する。では、こうしたネットいじめを防ぐために学校や教員ができることはあるのだろうか。
「ネットリテラシー教育を行う学校は多いですが、その内容はほぼ『個人情報を書いてはダメ』『画像の情報に注意しよう』というもの。しかし、エビデンスを見ていくと、子どもたちの間で起こっているネットいじめの問題はそこだけではありません。例えばSNSに『あの高校に合格した』『テーマパークに来た』と投稿したとしましょう。以前なら『おめでとう』や『いいね』という反応が返ってきたものですが、今は『自分だけ受かればいいのか』『行けない人のことを考えろ』と言われ、炎上してしまうのです。こうした実情を踏まえ、『ネットいじめは人を殺すこともある』という啓発を行う必要があります」
大切なのは「カースト」をつくらせないこと
ただし、ネットいじめが起こりにくい学校もあると原氏は言う。また、同じ学年でもネットいじめが起こりやすいクラスと起こりにくいクラスもあるという。その違いは何なのか。
「私たちの調査では、スクールカーストが形成されているクラスや序列がはっきりしている部活において、リアルでもネットでもいじめが頻繁に起こりやすく、フランクな人間関係のクラスや部活ではネットいじめが起こりにくいことがわかっています。カーストが低い子がいじりの対象になるため、まずはカーストを構成させないことが大切です」
さらに原氏は、それぞれの学校で起こっているネットいじめの実態に合わせた対策が必要だと語る。
「学力下位層で多いのがオンラインゲームのボイスチャットで直接『バカ!』などと言ういじめ。こうした直接型ネットいじめには、『他者への攻撃はダメ』といった基本的なリテラシー教育が必要です。一方、学力上位層の間接型ネットいじめに対しては、そうした指導はあまり意味がなく、『誰が書いたかわかるぞ』と伝えることが有効。ネット上の誹謗中傷対策として2022年に侮辱罪が厳罰化されたことや、書き込みはログが残ることなどを丁寧に話すと響きやすいです。いずれも、『ネット=悪』という単純な言い方ではなく、何がダメなのかをイメージできるように伝えることが重要です」
デジタルネイティブの子どもにとって、ネットは身近なもの。そのため、ゲームやSNSをなどネットの使い方については、どうしても大人が後追いをする形になり、実態がつかみにくい。だからこそ、教員や保護者は、情報をアップデートし、エビデンスに基づきネットいじめに対処していくことが求められている。
(文:吉田渓、注記のない写真:Graphs/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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