「サイバー攻撃」メタバースで"訓練"受ける効用 大日本印刷、実践的なシナリオで研修を展開

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それぞれの立場でどのような対応が適切なのかを学ぶ個人演習を受講した後、チームで演習に取り組む。所要時間は約2時間。ビジネス的な対応の強化を狙いとしており、インシデント発生時の組織間連携を目的に各部門とコミュニケーション、情報共有を図りながら、最適解を検討する。

セキュリティの第一人者監修の実践的なシナリオを採用

これまでの部門横断型演習は、一同が会議室に集まって行うために、実際は自ら情報収集しなければならない各部門の状況が意図せずとも見えてしまう、また推察できてしまい臨場感がないという声があった。その点について、開発を担当する松山哲也氏はこう話す。

メタバース上で情報収集を行う中で、さまざまな状況に遭遇し設問を通じて意思決定をしていく(写真:大日本印刷提供)

「今回はメタバース空間のオフィスを動き回って情報を探し状況を把握しながら、チャットなども使って互いに情報を共有して議論をし、対応を決定していくというプロセスを踏む。オンラインのため関係者が集まりやすいのはもちろんだが、メタバースによって没入感を高め、より現実に近づけることができた」

シナリオについては、サイバーセキュリティの第一人者であるサイバーディフェンス研究所専務理事の名和利男氏の知見をもとに、過去の事案とその対応を反映させた実践的なシナリオを採用している。

1回の料金は4人1組の受講で55万円(税込み)。演習後にはフィードバックもあり、自社の課題や改善点を洗い出すのはもちろんだが、関係者でサイバー攻撃に対する共通認識を持つことが重要だという。

「DX withサイバーセキュリティといわれるように、ビジネスのデジタル化が進むほど、サイバー攻撃対策が必要になることは言うまでもない。官庁やインフラ系企業だけでなく、とくに広範なサプライチェーンを有する製造業には対策が必要不可欠となっている」(谷氏)

サイバー攻撃が広く知れわたり、多くの企業でウイルス対策ソフトの導入が進んだが、もはやそれだけでは守り切れないのが実情だ。巧妙化するサイバー攻撃に対抗できるセキュリティ対策ソフトもさまざま出てきているが、それを使いこなす、いざというときに対応する人材の強化がいよいよ求められるようになっている。

國貞 文隆 ジャーナリスト

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くにさだ ふみたか

1971年生まれ。学習院大学経済学部卒業後、東洋経済新報社記者を経て、コンデナスト・ジャパンへ。『GQ』の編集者としてビジネス・政治記事等を担当。数多くの経営者に取材。明治、大正、昭和の実業家や企業の歴史にも詳しく、現代ベンチャー経営者の内実にも通じている。著書に『慶應の人脈力』『やはり、肉好きな男は出世する ニッポンの社長生態学』『社長の勉強法』『カリスマ社長の大失敗』がある。

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