ICT「苦手な教員」と「得意な教員」それぞれに課題、授業改善に必要な視点とは? 前田康裕「まんがで知るデジタルの学び2」
一般的に、子どものほうが大人よりも早くデジタル機器の操作を習得できます。子どもは操作ミスを恐れずにいじくり回すことができるからです。創造的な学習においては、このようにいじくり回しながら発見を通して問題解決につなげていくことが極めて重要になります。
漫画では、江渡先生が「まとめ」を板書して、ほかの子どもたちはそれを写すという作業で授業を終えます。しかも、子どもたちの「振り返り」には「やったこと」と「感想」しか書かれていません。 これでは、学習内容も学習方法も言語化することができないでしょう。本来は、学習活動を通して学んだことを記述させるべきです。一人一人の「学び」が共有されて、広がりと深まりが生まれます。
ICTが苦手な先生でも「ベテランの授業力」が生きることも
一方、ICTが苦手な先生であっても、また今までと同じ授業内容であっても、端末を活用することで、あっという間に創造的な学びを実現することもできます。
江渡先生に、何度も同じ質問をしてしまうほどICTが苦手なベテラン教員の舎貝常道(しゃかいつねみち)先生は、敬語の学習に端末を活用することに。これまでの授業では寸劇を行っていたものの、寸劇を端末で撮影して動画を作り、お昼の時間にビデオ番組として校内で放送することにしました。
タブレット端末を使うと、このような学習活動が簡単にできます。子どもたちは、「敬語の使い方」や「歴史上の出来事」といった「既有の情報」だけではなく、自分で調べたり考えたりしながら「新たな情報」を加えているのです。
こうすることで、敬語が使われる場面や歴史上の出来事の背景などが明確になり、より深く理解されるようになります。このように新たな情報を自分の既有の情報と関連づけることを「精緻化」といいます。単に何かを作ればよいというわけではなく、精緻化が促されるように配慮することで学習の効果が上がるわけです。
「主体的・対話的で深い学び」という言葉が広がる前に「アクティブ・ラーニング」という言葉が広がりました。どちらにしても、その目的は、アクティブ・ラーナーを育てることです。
ここでいうアクティブ・ラーナーとは、「自ら課題を見つけ、自ら学び続けることができる人」のことを指します。 アクティブ・ラーナーを育てるためには、授業の中での学習に限定するのではなく、休み時間や放課後、家庭での時間といった授業外の場で、一人で学習する経験を積ませる必要があります。
そもそも、人間は自分が好きなことは自分から学ぶものです。自分自身の判断で価値のある課題を設定し、学習してきた内容や方法を生かしながら何とか自分で解決していくという「探究型の学び」は本当に楽しいものであり、 アクティブ・ラーナーとしての意欲やスキルを高めることにつながっていくのです。
(注記のない画像:すべてさくら社提供)
執筆・漫画:熊本大学 特任教授 前田康裕
東洋経済education × ICT編集部
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