eスポーツ選手に教わる「ぷよぷよプログラミング」で、楽しみながら学ぶ 出張授業でコロナ禍にも子どもに幅広い経験を
教室のあちこちから声が上がるたび、セガの社員や教員たちがフォローに回る。できないと首を傾げる生徒に、周囲の生徒が「ここが違うよ」とアドバイスする場面も多く見られた。
ぴぽにあ氏は元プログラマー。自身の経験から、起こりやすいミスを想定して説明する。生徒の「うわ、瞬間移動した!」という言葉も聞き逃さず、本来はゆっくり落ちてくるはずの「ぷよ」が一気に最下部まで落ちてしまったのであろうことをすぐに察した。
「瞬間移動した? その理由はプログラミングによくあるミスです。小文字と大文字を間違えるとそうなってしまう。ここを直してみてください」
正しいはずなのに動かないと言う生徒に対しては「これは、手紙を書いたけれどまだ出していないという状態なんです。手紙を出すにはどうするかというと……」と、わかりやすい例を挙げて理解を促す。
10分間の休憩時間になっても席を立つ生徒は少なく、多くが夢中になって作業を続けていた。
現地へ行けないコロナ禍、「来てもらう」という選択肢
岩槻中がセガの出張授業を招いたきっかけの1つは、長引くコロナ禍にあった。
さいたま市では毎年、中学生の職場体験事業として「未来(みら)くるワーク体験」を実施している。協力事業者を地域で募り、子どもたちに実際の業務を経験させるというものだ。もともとは県の取り組みとして始まったもので、約20年続く長期事業である。だがそれが新型コロナウイルスの感染拡大によって、大きな制限を受けることとなった。校長を務める安藤幸子氏はこう語る。
「岩槻中の2020年の職場体験はコロナ禍で中止に。翌21年も、教員のつてを頼るなど、理解を求めながらの実施となりました。地域の事業者に受け入れてもらうことが難しいのは仕方ありませんが、子どもたちの経験が少なくなることを残念に感じていました」

その点、行けない状況でも来てくれるこの出張授業は魅力的だった。さらに扱うのはデジタル全盛の今日、子どもたちの関心も高い分野だ。
「生徒にどんな企業に興味があるかアンケートを取ったところ、プログラミングやIT関連という声が多くありました」
その希望を受けて、教員たちがこの講座を職場体験の1つとして招くことを決めた。セガのほかにもプロの声優や警察署、ケーブルテレビ事業者など、生徒の声も取り入れてさまざまな協力先を用意したという。
「子どもたちはいくつもの選択肢から2つの企業を選ぶことができるのですが、このぷよぷよプログラミングは中でもいちばん人気がありました。残念ながら全員参加させることはできず、選抜を行って参加者を絞ったほどです」
ほかの教員も「生徒たちは、いつもの授業では見せない表情を見せてくれています」と手応えを語る。社会に出てから求められるのは学力だけではないとし、「勉強以外の力も役立てられる人になってほしい。そうしたことの訓練として、この職場体験を活用したい」と続けた。