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ベスト経済書・経営書 今だからこそ経済とビジネスの本質を学ぶ

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2021年を代表する経済書・経営書を識者が選出した。この年末年始に読んでみたい本が見つかるはずだ。

出口の見えない迷宮をさまよい続けた2年だった。一向に答えの出ない問いを考え続ける日々でもあった。「いったい自分たちの何が悪かったのか」「これから暗い未来が待ち受けているのだろうか」。

パンデミックの初期。世界経済を牽引してきたグローバル化、そしてその理論的な支柱となった新自由主義に「終焉」の2文字が刻まれた。気鋭の経済思想家、斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』がベストセラーに駆け上がったのは、そんな時代の空気が後押ししたためである。マルクスの『資本論』を手に取る人たちも増えた。資本主義そのものがやり玉に挙がる時代になった。

だが、冷静になってみれば、そんなに簡単に答えを出せる話ではないことに気づく。『歴史の終わり』でフランシス・フクヤマが資本主義の勝利を宣言したのは1992年。強固になったはずの今の資本主義の耐久時間は本当に30年にすぎないのだろうか。どちらにしても、一度立ち止まって考えるべき時期である。そういう空気が広がり始めたのが、パンデミック2年目の21年という年だった。

経済の核心に迫る

「21年のベスト経済書・経営書は何か」。本誌は識者などを対象にアンケート調査を実施した。第1位に輝いたのは『バブルの経済理論』。バブル経済の本質を歴史と理論から徹底解明する骨太の経済書である。第2位は「ジョブ型雇用」の名付け親が書いた『ジョブ型雇用社会とは何か』。「ジョブ型」の言葉を誤用する経済界に警鐘を鳴らす。第3位の『自由と成長の経済学』は『人新世の「資本論」』を真っ向から否定する。

いずれも経済やビジネスの核心、本質に迫ろうとする書である。年末年始はこれらの本を手に「資本主義の未来」に思いをはせたい。

1位|バブルの経済理論 低金利、長期停滞、金融劣化​
櫻川昌哉 著 日本経済新聞出版 4950円

櫻川昌哉 大阪大学助手、名古屋市立大学大学院経済学研究科教授を経て、慶応大学経済学部教授。経済学博士。著書に『金融危機の経済分析』など。

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世界のバブルを分析し、バブル経済の本質を歴史と理論を通じて明らかにする。長期停滞に陥った現在の日本経済の謎を解き明かす。

 著者に聞く 

経済学は難しいといわれる。学術書の質と読み物の面白さを両立させようと思案を重ねた。完成まで3年だったはずが、8年を要した。

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