「ケインズ理論」の変遷を読み解く ケルトン教授はなぜ主流派を批判したか

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MMTの主唱者であるケルトン教授は「自分たちこそケインズの考えに最も近い学派だと考えている」とインタビューで述べた。実際、MMTはポストケインズ学派の一部として位置づけられる。

ケルトン教授は、主流派ケインジアンの代表格であるポール・サミュエルソン(1915年~2009年)によって「水で薄められたケインズ理論を学ぶことになってしまった」と批判。さらには、「『IS-LMモデルを覚えれば、ケインズ理論は理解した』とみんな思うようになってしまったのは、非常に残念なことだ」と述べた。

こうした指摘を理解するうえでは、ケインズ理論をはじめとする経済学の歴史を正しく理解しておく必要がある。以下で具体的に解説しよう。

確実性の公準を捨て去ったケインズ

 アダム・スミスを始祖とする古典派経済学の誕生から約240年。多くの経済学派が登場したが、それらは理論の前提に「確実性」を置くのか、あるいは「不確実性」を置くのかによって2大分類できる。

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