
生徒の状況理解力と先生の応答能力に感銘
評者 兵庫県立大学大学院客員教授 中沢孝夫
横浜市の桐蔭学園中学・高校の生徒たちと、法学者との対話の記録である。対話の素材は、古今東西の「物語」と日本の裁判所の判決文だ。
まず評者が驚いたのは、参加している生徒たちの感受性と反応の素晴らしさである。
溝口健二監督の『近松物語』。イタリア映画の『自転車泥棒』。ローマ喜劇の「カシーナ」「ルデンス」。ギリシャ悲劇の「アンティゴーネ」「フィロクテーテース」。それぞれの作品は、ストーリーが難解ということはないが、幾つものエピソードがあって、そこに見逃せない含意がある。
たとえば、『近松物語』の最後で、姦通罪により刑場に向かって引き回される男女の、晴れ晴れとした笑顔の意味にたどりつく中高生と先生のやり取りは読んでいて楽しい。それは『自転車泥棒』やギリシャ悲劇の理解も同様だ。世間には徒党を組み我欲を通す人たちと、いつも“にもかかわらず”「義」を通す人たちがいることがわかる。
この記事は有料会員限定です。
(残り 3809文字 です)
【4/30(水)まで】 年額プラン2,000円OFFクーポン 配布中!
詳細はこちらから
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待