迷走する長崎新幹線 決め手の新型車両を断念
2022年度の開業を控える九州の長崎新幹線。長年の悲願だったが、計画の前提が崩れ、困惑が広がる。
「2022年長崎、発進!」──JR長崎駅で電車を降りると、期待にあふれた看板が目に飛び込んできた。22年度、佐賀県と長崎県を走る九州新幹線・西九州ルート(通称「長崎新幹線」、下図)が開業する。1973年に国の整備計画に盛り込まれて以降、半世紀にわたる地元の悲願だ。
とりわけ九州西端に位置する長崎県は交通の便の悪さに苦労しており、開業への期待が大きい。11年に九州新幹線・鹿児島ルート(博多─鹿児島中央間)が全線開業したが、他県に比べ長崎には恩恵が少なかった。次はいよいよ自分たちの番。総工費約5000億円のうち、長崎・佐賀両県も計約900億円を負担する一大プロジェクトだ。
武雄温泉(佐賀県)─長崎間では大掛かりな新幹線規格(フル規格)の工事が進み、JR長崎駅周辺では開業をにらんだ大規模な再開発も行われている。
FGT導入計画が消え孤立した超短距離線に
ところが、夢の新幹線に今、暗雲が漂っている。
当初の計画では、まず武雄温泉─長崎間(約67キロメートル)を22年度にフル規格で開業する。その後、新鳥栖─武雄温泉間の在来線上も走行可能な新型車両(フリーゲージトレイン=FGT)を導入し、福岡・博多と長崎を直通で結ぶ(博多─新鳥栖間は九州新幹線・鹿児島ルートに乗り入れ)。FGTが山陽新幹線区間も走行すれば、関西と長崎が乗り換えなしで結ばれる。これが長崎新幹線の最終形で、地元の悲願だった。
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