安全保障関連法案の審議が参議院特別委員会で大詰めを迎えている。多くの憲法学者が「憲法違反」と断じるこの法案をめぐっては、憲法解釈に関する従来の政府見解との整合性などを中心に論議されてきた。安倍晋三首相や中谷元防衛相の答弁は緻密さを欠き、政府見解も二転三転している。
一方、憲法論議と並ぶもう一方の柱であるべき安全保障については、突っ込んだ議論が足りない。軍事や経済で台頭する中国とどう向き合うのか、日米安保体制の強化だけで大丈夫なのかといった論争は深まっていない。このまま、政府・与党が数の力で採決を強行するなら、国会の安保論議に禍根を残すことになる。
福永文夫・独協大学教授(日本政治外交史)は、近著の『日本占領史 1945-52』(中公新書)で、「戦後日本の政治は、『憲法』と『安保』という二つが引き寄せ合って一つにならない楕円のなかに展開し、いまあらためて国際社会との関わりを問われている」と述べている。つまり、戦争への反省から平和憲法を守らなければならないという流れと、米国の世界戦略の中で日米安保体制を中心とした安全保障政策を打ち立てていかなければならないという流れとの相克の中で、日本の政治はもがき続けてきたというのである。
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