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成長は買えるのか 第14回

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円安も何のその。日本企業の海外M&Aが過去最多の勢いで増えている。だがその成功率は極めて低いのも事実だ。「成長を買う」「時間を買う」と経営者は言うが、その成否を分けるのは何だろうか。

大型買収の成功率は1割以下

SCSグローバル取締役 松本 茂

まつもと・しげる●20カ国、50件以上の買収で助言。経営学博士(神戸大学)。著書に『海外企業買収 失敗の本質』(小社刊)。(撮影:梅谷秀司)

企業買収では買えるものと買えないものがあります。この二つを経営陣が混同し、幻想を抱くときに落とし穴が生まれます。買収ですぐ手に入るのは市場占有率、生産能力、そして市場参入までの時間。特に海外では、自社でゼロから現地進出するよりもはるかに短期間で事業を立ち上げることができます。しかしシナジー(相乗効果)による利益成長は、買収だけでは手に入りません。買収後、経営に工夫を凝らして勝ち取るものなのです。

企業買収は実行時とその直後に注目が集まりがちですが、成否の評価は直後、5年後、10年後の3段階で行うべき。買収直後は誤算が生じることが多く、事前に精査したはずの事業が思いどおりにいかないことも少なくありません。そもそも買収交渉では買い手と売り手の間に情報の非対称性がありますから、後になって「こんなはずではなかった」となりやすいのです。

イトーヨーカ堂(現セブン&アイ・ホールディングス)がセブン|イレブンを米国で展開するサウスランド社を買収した件や、日本たばこ産業(JT)による米R・J・レイノルズ・タバコ・カンパニーの海外事業の買収などは、今でこそ海外M&Aの成功例とされますが、買収直後は赤字を計上するなど見通しの甘さが指摘されました。つまり、直後に誤算が判明したからといって買収を失敗と評価するのは早計です。

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