中学受験の「終わり方」の理想、第1志望に合格するのは3割の苛酷 作家・朝比奈あすか「他者と比較」止めるべき訳

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そういう私も、中学受験期間中は視野が狭くなり、心身共に疲弊していて、こんなことは考えられなくて。取材を通じて中学受験を振り返る機会を得られて、こういうふうにすればよかったなと後付けで語っています。

―― そもそもよりよい人生を歩んでほしい、幸せになってほしいと中学受験をするのに、子どもが受験で自信をなくしてしまったり、自己肯定感が下がってしまっては本末転倒です。

今も比較され、競争で傷つけられて、もしかしたら心の外側がぼろぼろの子もいるかもしれません。ほかの子と比較ばかりしてしまうと、その子本来の姿が見えなくなってしまいます。

しかし子どもたちの心の中には、その子の核というか、この小説になぞらえて言えば、その子だけにしかない「翼」があります。その翼は、目指す場所が最初から違うので、ほかの子とは比較できないものです。

それなのに、つねに他者と比較されたまま大人になってしまうと、自分の翼を折り畳んだまま、どこどこ大学を出ている、なんとか商事に入ったというような、他者と比較しないと自己確認できない大人になってしまって、何が幸せなのかがわからなくなってしまいます。そうならないためにも、自分だけの翼を大切にすること、その翼で自分にとっていちばんよい自分になれる場所を目指すことが大切なんだろうなぁと思います。

中学受験という、どうしても合否が分かれてくるような苛酷な場では、誰との比較でもなくその子の翼を尊重してくれる大人の存在が本当に大事になってくると思います。

偉そうにいろいろと語ってしまいましたが、私も子育ての途中で母親として未熟です。手探りでわからないことばかりですが、いろいろと反省することで、自分を少しずつ改められています。そういう意味では、今は中学受験を経て親としても成長することができたと思っています。

朝比奈あすか(あさひな・あすか)
慶應義塾大学卒業後、会社員を経て、2006年に群像新人文学賞受賞作の『憂鬱なハスビーン』(講談社)で作家デビュー。以降、働く女性や子ども同士の関係を題材にした小説をはじめ、多数の作品を執筆。『君たちは今が世界』(KADOKAWA)と『人間タワー』(文藝春秋)は、20年の中学入試において男子難関校を含む10校以上で出題されるなど、国語入試頻出作家としても注目されている
(撮影:松蔭浩之)

(文:編集部 細川めぐみ、注記のない写真:プラナ / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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