低年齢ほど治療困難「ネット依存」知られざる実態 主な依存対象は「対戦型オンラインゲーム」

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家族の手に負えないときは、外部に助けを求めていいと思います。われわれのようにネット・ゲーム依存の治療を行う医療機関は20年9月現在で全国に89カ所あり、地域の保健所や精神保健福祉センターにも相談できます。家族会とつながり救われる方も多くいます。

また、消費生活センターでもオンラインゲームの課金に関する相談が増加傾向にあり、現在消費者庁によって、ゲーム依存に関する相談が寄せられた際に医療機関や自治体の窓口につなぐなどのマニュアル作成が検討されています。

国はICT活用の推進をするなら「手当て」もすべき

──GIGAスクール構想によって1人1台の情報端末が配布されましたが、この状況をどうご覧になっていますか。

最も依存に陥りやすい条件は、いつでもどこでも依存対象にアクセスできる環境があること、そして早い年齢からその対象に触れること。GIGAスクール構想はまさにその状況をつくることになるわけです。国が子どもたちにICT活用を推進するのなら、依存に限らずいじめや個人情報流出などのトラブルも含めて、負の問題に目を向けた教育やカウンセリング体制の整備などの手当ても併せて行うべき。今はそのバランスが悪いのではないでしょうか。

学校から配布された情報端末の使用状況やルールに心配があれば、保護者からも学校や教育委員会に声を上げてほしいと思います。

国内外ともにネット依存に関する調査研究は進んでおらず、現状ではゲームの使用に関するガイドラインもほとんどありません。科学的エビデンスに基づいて使い方を示したものがあれば、保護者も先生も子どもたちをネット依存から守りやすくなりますよね。WHOや国が近い将来、ガイドラインを示してくれることが期待されます。

マニュアルがない以上、先生も保護者の皆さんもネット・ゲーム依存に関する情報にアンテナを張って知識を持ち、依存による心身への影響を子どもたちにも説明するなど、上手な情報端末の活用に努めていただきたいと思います。

樋口進(ひぐち・すすむ)
独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長。ゲーム障害、ギャンブル障害などの行動嗜癖、アルコール関連問題の予防・治療・研究などを専門とする。2011年に国内初のネット依存治療専門外来を設立。WHO専門家諮問委員、行動嗜癖に関するWHO会議およびフォーラム座長、厚生労働省アルコール健康障害対策関係者会議会長、同省依存検討会座長(13年)、内閣官房ギャンブル等依存症対策推進関係者会議会長、日本アルコール関連問題学会理事長などを務める
(写真:樋口氏提供)

(文:田中弘美、注記のない写真はiStock)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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