低年齢ほど治療困難「ネット依存」知られざる実態 主な依存対象は「対戦型オンラインゲーム」
当センターが、19年にスクリーニングテストによって、ゲーム障害の疑いのある若者(10~29歳)の割合を調査したところ、男性が7.6%、女性が2.5%、平均5.1%という結果を得ました。とくに年齢が低い男性で多くなっています。
コロナ禍でこの調査は継続して実施できていませんが、当センターの通院患者に対して20年2月と同年5月・6月の生活習慣やネット使用について比較調査したところ、ネット接続、スマホ使用、ゲーム時間が延びるなど症状が悪化していることがわかりました。コロナ禍での一斉休校中にインターネットやゲームに夢中になり、学校に行けなくなったという中高生の新規受診もあります。
また、治療は依存対象との接触を減らしてリアルの活動に置き換えることを支援するのが基本ですが、オンライン授業が増えたことでそれが難しくなり、われわれも患者のご家族も治療に困難を感じています。明らかに一斉休校や外出自粛の影響はあると思います。
子どもが依存に陥るリスク要因とは?
──ゲーム依存に陥りやすい子どもに何か傾向はありますか。
当センターの患者は、圧倒的に男性が多い。とくに12〜18歳くらいの思春期の男子は、シューティングゲームのような依存性の高い対戦型のオンラインゲームにはまりやすいです。女子は育成・音楽・パズル系など依存性の低いゲームを好むため依存にはなりにくい。SNSの過剰使用には陥りやすいですが、それが原因での来院はあまりありません。
自尊心の低さや学業不振、友人関係の乏しさなどもリスク要因となります。対人関係が苦手で、現実社会の中で自分の居場所がない、得意なものを見つけられないといった子どもたちが、ゲームのようなバーチャルの世界に逃げ込んでいるということだと思います。
また、発達障害が関係するケースもあります。発達の特性から行動をコントロールできないことがあり、とくにADHD(注意欠如・多動性障害)はゲーム依存を合併する割合が高いです。
ゲーム開始年齢が低い子どももハイリスク。また、お父さんがゲーム好きで子どもがゲームにアクセスしやすいなど、ゲームが推奨される環境もリスク要因です。
当センターの患者はほとんどが中高生ですが、まれに小学生もいます。ゲームを始めてから症状がひどくなるまでの期間が短く、生活悪化の度合いもかなり重い。親がゲームを注意したら暴れて警察沙汰になったという子もいます。ゲーム障害は年齢が上がると本人が「このままではまずい」と自覚して治療を頑張れますが、低年齢の子どもは問題を認識できないので治療が非常に難しくなります。
また、親が子どもの面倒をあまり見ない、夫婦仲が悪い、両親の子育てについての考えが異なるなどの家庭環境もリスクが高い傾向にあります。母子家庭や父子家庭もハイリスクですが、働くことに時間を取られて子育てに手が回らない、思春期の子どもの行動を親が1人でコントロールするのが難しいという親御さんの苦しい状況があるのだと感じます。
保護者が心得ておきたい予防の基本
──ゲーム依存から子どもたちを守るために、保護者にできることは何でしょうか。
まずは予防です。依存が進行するほどコントロールが困難になっていくからです。なるべく情報端末は親のものを貸し出す形にして、アプリやソフトのダウンロードや課金については親が管理。本人との話し合いのうえで、ペアレンタルコントロールを設定するのも有効です。そして使用時間などルールを決め、守らない場合のペナルティーを決めておきます。使用場所は親の目の届く範囲で、しっかり見守りましょう。
ただ、すでに依存の兆候が現れている場合もあります。ゲームへの執着が弱いうちであれば、親の言葉にも耳を傾けられますから、じっくり話し合ってください。強制的に情報端末を取り上げる、Wi-Fiの接続を切るなどの行動に出ると、本人が大暴れするなどして親子関係が悪化します。大切なのは会話。問題を指摘して改善策を本人と一緒に考えるプロセスが必要です。