産学官連携も開始「小金井スタイル」でGIGA牽引 小金井市、東京学芸大・NTT Comと協定締結

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「Agencyとは、答えのない問いでも他者と協働して主体的に問題解決できる力を意味します。VUCA(ブーカ)やSociety5.0など、次代を担う子どもたちには、先行き不透明で予測困難な世界が待ち構えています。子どもたちが、この時代をたくましく生き抜くために必要な力が、Agencyなのです」

ICT教育で、どのようにAgencyを育成していくのか。教育長が「小金井スタイル」と掲げる特徴的な概念が、2つある。1つ目は、「子どもの“認知特性”に応じた個別最適化学習」だ。

「ICTを活用することで、一人ひとりの習熟度に合わせた個別最適化学習が可能になることはよく知られていますが、小金井市では、習熟度の程度に加え認知特性に応じた個別最適化学習を目指しています。物事を認知(理解)するとき、写真や映像など『視覚優位』で解釈する子、文字や文章を読み取り『言語優位』で解釈する子、文字や文章を音として情報処理し『聴覚優位』で解釈する子など、その特性は子どもによってさまざまです。

例えば、授業でナスカの地上絵で有名なハチドリの絵を紹介する際、教員が『ハチドリの絵の全長は96mです』と説明するだけでなく、ICTの画面上に、ハチドリの絵と自分たちの学校の航空写真を利用し96mの長さがわかるビジュアルを並べて示す。これにより、言語優位の子も視覚優位の子もそれぞれの認知特性に応じて『96m』を理解し、『じゃあ、ナスカのペリカンの絵はどのくらいなんだろう。調べてみようよ』など、周りの友達と学びを深めていくことができます。このような、認知特性に違いがあることを踏まえた授業、その子の認知特性に即した教材や学習方法のサポートにより、深い知識の習得と、その子らしいひらめきを導くことを目指します」

一方、長年不登校支援にも関わってきた大熊教育長。「特別な支援を必要とする子どもたちには、『視覚優位』タイプが多い傾向にあります」という。

「彼らは文字を読んだり話を聞いたりが苦手なことが多いのですが、映像を見るだけで、目で完璧に理解する。不登校支援に関わっていたとき、彼らの認知特性を生かしたICT教育を実践した結果、ある子はシステムエンジニアに、ある子は世界トップ100のゲーマーを経てカメラマンになりました。学校には通えませんでしたが自分の特技と結び付いた職業と出合い、社会で活躍しています。認知特性に応じた個別最適化学習は、特別な支援を必要とする子どもたちにも、新しい学びのスタイルを提供できるのです」

学習を効率化し「創造する時間」を

2つ目は、「学習の効率化による探究活動や創造する時間の創出、協働学習の充実」だ。

「ICT活用により、従来の授業で行われていたプリント配布の時間、順番を待つ時間、板書の時間などを省くことができます。5年生理科の『メダカの誕生』の授業を例に取ると、従来は、教員が、メダカの卵が成長し10日目にふ化するまでの過程を説明、板書しながら一方的に教え、子どもたちに観察記録を書かせ、それをまとめて終了というスタイルでした。

学習指導要領的にはこれでもよいのですが、教員の説明や板書の時間を、数分の長さでわかりやすくまとめられた動画教材を視聴する時間に充てるだけで、授業時間に余裕が生まれ、子どもたちの理解が深まります。

動画を視聴した後、『すべての卵はメダカと同じようにふ化するのか』と問いかけると、子どもたちは自らさまざまな生き物のふ化する日数を調べ、メダカと比較することによって知識の定着を図ることができます。このように関わることで、『動画では10日でふ化すると言っていたけれど、私の卵は12日かかった。なぜだろう』などと、自ら問いを持てるようになる。このような授業の積み重ねが、Agencyの育成につながると考えています」

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