大学進学断念も「受験料払えない」困窮世帯の過酷 中退だけではない「コロナで年収減」家計厳しく
しかも、そのうち一般選抜が29%、学校推薦型選抜(指定校推薦入試)が46%、総合型選抜(AO、スポーツ活動入試)が23%だった。「全体の平均は一般選抜5割、指定校と総合型を合わせて5割」(渡辺氏)というから、経済的な理由が子どもたちの進路に大きな影響を与えていることがよくわかる。
今年、初めての実施となった大学入学共通テストの受験料は2教科以下で1万2000円、3教科以上で1万8000円だ。共通テストだけで受験可能な大学ならばいいが、その後、私立大学を受けるとなると1校につき約3万5000円かかる。第1志望が国公立ならば、私立を滑り止めとして受けることも多いが、その場合は入学金を支払わなければならず、晴れて国公立に合格が決まっても入学金は返ってこない。
こうした中、共通テストを主催する大学入試センターは、共通テストの成績を利用する大学が支払っている手数料を段階的に引き上げる方針を示している。今後各大学が、この値上げ分を個別入試に上乗せする可能性もあり、受験生の負担増が懸念されている。ただでさえ、受験料の捻出に困る家庭がある中で、渡辺氏は「共通テストの無償化、できないなら困窮家庭向けに受験のための公的支援を充実させてほしい。これをやらないと格差が縮まらない」と強く訴える。
さらに困窮家庭を苦しめているのが、多様化、複雑化が進む大学受験の「情報格差」だ。経済的な理由から塾に通っていない子どもも多く、予備校などのプロの情報がない中で作戦をうまく練れずに苦戦した子もいるようだ。クラスメートとの交流が少なくなる浪人生となればなおさらで、受験を自学自習で乗り切る厳しさは計り知れない。コロナ禍の大学受験は、いっそう家庭の経済力が学力に直結するようになっており、課金と情報戦による格差が広がっている印象を受ける。
「東京都には『受験生チャレンジ支援貸付事業』という受験料や塾費用などを無利子で貸し付けしてくれて、大学に入学できれば返済しなくていいという制度があります。こうした制度が全国に広がるといいと考えています」(渡辺氏)
キッズドアでは4月から開始した今年の「受験サポート奨学金」のクラウドファンディングも、目標金額900万円を達成する見込みという。高校3年生250人に5万円、高校2年生50人に3万円を7月に支給することを目指している。
文科省の「高等教育の修学支援新制度」をはじめ、学ぶ意欲のある子どもたちを支援する取り組みは拡充されつつあるようにみえる。だが、それはまだ十分ではない。経済的な理由で進学を諦める子どもが出ることのないよう、こうした教育格差の現状をより多くの人が正しく理解し、支援の輪が広がることが大きな力へとつながっていくに違いない。
(注記のない写真はiStock)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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