伝統の進学校「iPadをどう使うかは自由」の真意 「これダメ、こう使え」言わない城北のICT教育
基本的にタブレットやパソコン、ICTユニットをどう使うかは、授業を担当する教員に一任されている。清水氏は数学が担当科目だが、授業ではGoogleのClassroomを使用し、手元にあるiPadに数式やグラフを書いて大型モニターに映し出し、生徒はそれを見るか、自分たちのiPadで見る仕組みにしている。
「これだと板書が見にくいという問題も解決されるし、書いたものは保存できるので、生徒たちの復習にも便利です。昨年の学校一斉休業の際には、課題の配信や提出、授業の動画配信もこのツールで行いました」
ほかにも清水氏は、Twitter、LINEといったSNSを利用して、数学に関する情報発信や生徒とのコミュニケーションも行っている。日々忙しく働く中で、なぜそのようなことをしているのか。
「理由は3つあります。1つ目は、こんな使い方もICTでできるという事例を、ほかの先生や生徒たちに提案したいと思ったことです。2つ目は、自分自身の働き方改革。共働きなので、私も家事、育児を担っており、生徒からの質問や相談の窓口を学校以外の場に開くことで効率的な働き方を目指しました。3つ目は、これからの時代、教員の役割は生徒の自発的行動を促すコーチとかファシリテーターといわれていることに、違和感を持ったこと。自分でどういう役割がいいかと考えたときに、私は学びの中に入っていきたいと思ったのです。自分が中学・高校の数学の中で面白いと思ったことや感じたことを発信することで、私自身が学んでいく姿を生徒たちに見てもらい、それを通じて数学の面白さ、学びの楽しさを感じ取ってもらえればいいなと思っています」
実際に、こんな例がある。学校の試験に出した問題に対して、ユニークな解法で答えを導き出した生徒がいた。本人の了承を得てTwitterで紹介したところ、今まで獲得したこともない6000近い「いいね」を集め、多くのリツイートと、リプライがあったという。
「学校でこれからの時代に必要になるコアな学びを授業で習得したり、仲間をつくったりすることは大事ですが、学校の外にもコミュニティーを広げて学んだり、自らの考えを発信していくことも大事です。それにはICTが欠かせないツールであることは間違いないでしょう」
最近では、教員からの相談、提案も増えてきている。例えば、セブ島の語学学校とオンラインでつないで、生徒とネイティブスピーカーを1対1で会話させたいという構想を実現させたこともある。「これからは5教科以外の体育や芸術などの授業も、ICTの導入でドラスティックに変えていくことが可能だと思います」と清水氏は先を見通す。
いよいよ今年度からは、中学2・3年生と高校1年生でBYODによる端末整備が始まる。清水氏は「そこがうまく回っていくかが、当面の課題です」と言うが、そこは4年にわたる経験とコロナ禍において急きょオンライン対応をすることができた経験が、大きな支えとなってくれそうだ。
(撮影:尾形文繁)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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