急激な情報化で学校「混乱の年」を乗り切るカギ 戸惑う現場、本当にICTの活用は進むのか?

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2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で、全国の小中学校に対し、日本の学校教育史上例のない一斉休校の要請が行われた。「学びを止めない」対策としてオンライン授業への関心も高まり、「GIGAスクール構想」のICT環境整備が加速した。長年、教育の情報化の重要性を訴えてきた東北大学大学院情報科学研究科教授の堀田龍也氏に昨年を振り返ってもらうとともに、ICT化で変革が進む今年21年の学校教育を展望してもらった。

日本で学校のICT活用が進まなかった理由

――2020年は、小中学校で1人に1台の端末を配備する「GIGAスクール構想」の環境整備がコロナ禍で加速し、学校教育でのICT活用がようやく実現に向けて動き出しました。

教育の情報化にとって、これまで経験したことのない大きな1年でした。私は、約20年前から文部科学省の審議会などの委員を拝命していますが、教育の情報化は本流ではありませんでした。当時は「教育とは、先生と子どもたち、人と人とのぶつかり合いの中で行われるものであって、テクノロジーが関わる余地はない」という昭和の教育観が主流で、私の意見は「まあ、そんな考えもあるよね」くらいにしか受け止めてもらえない時期もありました。その後、教員の世代交代も進み、デジタルネイティブ世代の若い教員も増えましたが、それでもPCを使う教員はほんの一部で、学校におけるICT活用はなかなか進みませんでした。

東北大学大学院情報科学研究科 教授 堀田龍也

――なぜ、ICT活用は進まなかったのでしょうか。

学校におけるICT端末の配備やインターネット接続環境などの整備が、十分に進まなかったことが1つの原因です。公立の小中学校は地方自治体が設置するため、国が定める一定の基準を満たせば、どんな校舎を建て、どんな備品を整備するか、すなわちICTをどれだけ入れるかも自治体に任せられています。国は、これまでも学校のICT整備計画で目標を設定し、そのために必要な費用を積算したうえで、自治体の税収で不足する分は地方交付税として交付する地方財政措置を講じてきました。18年~22年度の5カ年計画では、3クラスに1クラス分程度の端末整備を目標に市町村への財政措置を講じました。

しかし、地方交付税は自治体の財源の一部に組み込まれるので、実際にICT整備をするかどうかは各自治体の判断に任されてしまいます。その結果、道路や橋などほかの事業に予算を使って、学校のICT環境の整備を後回しにするところもあり、自治体によって整備状況には大きなばらつきがありました。学校の情報化が遅れた背景には、自治体幹部やベテラン教員の間に根強い「昭和の教育観」もあったと思います。

――その状況が昨年、一変しました。

「このままではまずい」という空気が醸成されてきたのは、この5年くらいです。18年のPISA(国際学習到達度調査)では、デジタル機器の利用状況も調査され、日本は「授業でデジタル機器を利用する」と答えた生徒が2割弱と、OECD加盟国の中で最下位でした。20年度からは小学校でプログラミング教育も必修化されることになり、以前なら傍流の立場だった私が中央教育審議会の委員に呼ばれ、政治家も教育ICTの重要性を説くようになりました。そうした変化の象徴がGIGAスクール構想です。

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