急激な情報化で学校「混乱の年」を乗り切るカギ 戸惑う現場、本当にICTの活用は進むのか?
これまで、用途が限定されない地方交付税の中に予算を折り込む財政措置で、自治体にICT環境の整備を促していたのでは整備が進まなかった。その現実を踏まえ、GIGAスクール構想では、国が用途を指定した補助金を19年度補正予算案に計上して整備を進めることになりました。さらにコロナ休校の間、オンライン授業を実施できたのが一部の学校、先生にとどまったことで、保護者からの要望も強まり、23年度完了予定だった「1人1台端末」の環境整備が前倒しされて、21年3月には大半の学校で完了します。
ICTを道具として情報を収集し、判断する能力が不可欠
――ICT化で2021年の学校教育はどうなるのでしょうか。
世間並みの情報化が実現されてよかったと思う一方、21年は急速な教育の情報化に伴う混乱が起きるでしょう。国の整備計画に沿って徐々に情報化を進めてきた一部の自治体を除けば、多くの学校でICT環境がいきなり整備されることになります。GIGAスクール構想の目的、経緯を知る先生も多くはないので、急激な変化に不満が出るかもしれません。

これからの混沌として先を見通せない時代を生き延びるには、ICTを道具として情報を収集し、判断する能力が不可欠です。しかし「日本の学力は世界的に見ても高いのだから、わざわざICTをやる必要があるのか」という声を教育委員会の幹部から聞くこともあります。
そのような発言をする人が経験してきた、テストで高い点数を取る学力を身に付け、一生安泰の職業を得て、組織のヒエラルキーを上っていくという昭和のパラダイム(時代を牽引する規範的考え方)は、現代では通用しなくなってきています。一生安泰と思われた企業が淘汰され、今やキャリアチェンジはどこにでもある、前向きな話なのです。教育界もICT導入を機に、世間並みにパラダイムや価値観の転換をすべき時期を迎えていると思います。
――これまで経験のないICT活用に戸惑う先生も多いと思いますが、本当に情報化は進むのでしょうか。
学校の先生は、基本的にまじめです。情報化の必要性を納得すれば、教育の専門職としてやれるところから対応していくと思います。何より、先生が必ずしもICTに詳しくなる必要はありません。ある程度の慣れがあれば大丈夫です。ICTがあると、授業で学ぶ前に「織田信長のことを調べてきました」という子どもが出てくることも考えられます。知識をすべて教え込む従来の教育なら、先生は困ってしまうでしょう。
しかし、ICTを活用した教育では、まず調べさせて、それを発表させればよいのです。そのうえで、「本能寺の変がポイントだから、そこをさらに調べてみよう」などと促します。正しい情報を集めるためにどんな情報源を使い、どんなことに注意すべきかを考えさせ、グループで一緒に調べられるように「クラウド型のプレゼンテーション資料作成ツールを使って協力しよう」とやり方を示せばよいのです。
ベテランの先生が、プログラミング学習の授業をやっているのを見たことがありますが、こんな感じです。

















