百貨店、コロナ一服でも本格回復が程遠い事情 EC化を一層加速、外商客との商談はズームで

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外出自粛機運のまだ残る6月のサイトリニューアルが集客につながった。「クリアランスセール対象の商品やリピート購入しやすいアイテムが特に好調だった。お中元のオンライン購入も増えた」(三越伊勢丹HDの広報)。2021年3月期における売上高目標は当初250億円に設定していたが、足元の状況を踏まえて上方修正する構えだ。

三越伊勢丹とは対照的にエイチ・ツー・オーはリアル店舗の催事と連動したEC強化を目指している。

阪神百貨店で毎年ゴールデンウィークと秋に開催している「大ワイン祭」は、1000円から4000円程度のテーブルワインを世界中から約850種類揃え、来場者は全商品を試飲できる。大人気のイベントで、1週間で1億5000万円の売上高を叩き出す。

外商客との商談もズームで

今回はコロナで中止となり、4月29日からホームページ上で展開した。ワイン通やソムリエ、レストランオーナーのうんちくを動画で流すなどの工夫もあり、1週間で約6000万円の売り上げを計上できたという。

「モノを単にカタログ化して売るのではなく、価値観や世界観を含めて売っていくのは、百貨店が追求するオンライン販売の1つの手法ではないか」とエイチ・ツー・オーの荒木社長は強調する。

今後は阪急百貨店で世界の茶葉を集めた催事「ワールド・ティー・フェスティバル」もオンラインで展開していく。ZoomやLINEのチャットを使用した外商客とのコミュニケーションも実施していく。

構造不況の中でコロナ禍に見舞われた百貨店大手。ただ、コロナで環境が変わったからこそ、今後伸ばしていく分野や手法が見えてきた側面もある。各社が巻き返せるかどうかは、デジタルシフトのスピード感がカギを握る。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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