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Introduction ―イントロダクション―
日本企業にとっての「グローバル化」を問い直す
日置 圭介 デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー

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「真のグローバル化」「自社にとってのグローバル」を理解する

複数の大手企業のここ最近の中期経営計画にあらためて目を通してみましたが、ほぼ例外なく「グローバル」について言及しています。

注意すべきは、自社にとって「グローバル」が何を意味しているのかを突き詰めて考え切れていないことです。その結果、せっかくつくった中計も、どの企業のものを並べても総花的で似たり寄ったりの内容、また、まるで競合がいないかのようなバラ色のグローバル化プランになっているなど、戸惑っていらっしゃるように見ています。

大きな理由は、やはり「真のグローバル化」がどのようなものなのかを理解し切れていないために、何がギャップであり、どこまでグローバル化することが自社にとって最適なのかの判断がつかないことにあるのだと思います。日本企業と比べると、欧・米企業のほうがグローバル化を推し進める素地はあったのかもしれません。米国は国籍は1つですが、移民の国であり人種は多様、それゆえ、グローバル化が本格化する前から自国内である種の「ミニグローバル」対応をしていました。また、欧州は、もともと小国の集まりであり、それゆえ小規模のファミリー企業も多いのですが、そのなかでも多国展開している大企業は、市場や経営資源に関する考え方は最初から多様性を前提としています。

しかし、彼らとてやすやすとグローバル企業としての今の地位を確立したわけではありません。自社のグローバル適応への答えは自ら見つけ出すしかないことをいま一度胸に刻み込む必要があります。その結果次第では、もしかすると、企業または事業によっては、必ずしも今グローバル化に大きく舵を切らなくてもよいと判断する可能性があるかもしれません。経営のグローバル化は、決して右に倣えで進めるものではないのです。

グローバル化に向けた取り組みの一例――グローバル本社のあり方

問うべきは、大小ではなく、「強さ」

苦労と苦悩を伴いながらもグローバル化へと歩む日本企業が取り組んでいる経営課題は、グローバル本社とはどうあるべきかというテーマです。特に昨今、日本企業における本社論は、業績低迷傾向とも相まって、コストと人数という量的観点からの「大きいか小さいか」というのが議論の的になりがちです。しかし、量にだけ焦点を当てた本社論は事の本質ではなく、単に企業の弱体化を招く危険性が高いのです。

重要なのは、いかに本社=コーポレート機能が「強いか」です。そしてこのことはグローバル経営という文脈で考えるとより重要性を増します。

そもそも、本社はどのような権限・機能を有するべきか、またどういった権限・機能は委譲してよいのかという議論が不足しています。そんななか、「わが社は分権的」ということをよく耳にしますが、当然首をかしげます。役割、権限・機能の観点から本当に集権的な状態を想定しないままの分権論は、本当の意味での「任せる」ではなく、単に「放置している」だけであり、グローバル化していく企業をどう舵取りしていくのか定まっていない証拠です。

ベースとなる国の力、プレゼンスが縮小気味で、強烈なリーダーシップを発揮する創業経営者も減少している現状において、グローバル経営の司令塔となる本社がどうあるべきかを定義できずにいることは、非常に危険な事態です。

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