Introduction ―イントロダクション―
日本企業にとっての「グローバル化」を問い直す
日置 圭介 デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー
日本の立ち位置と経済環境の
今後を俯瞰する
日本企業のグローバル化を考えるに際しては、今置かれた状況を正しく認識する必要があります。まず、マクロな視点から「ホーム」である日本市場を眺めると、相対的な市場規模が徐々に縮小していくことは確実です。
また、一般的に気力・体力がより充実していると考えられる若年労働者が減少していくことは、ポジティブには捉え難いのではないでしょうか。このようななかでも一定程度の経済成長を続ける、または少なくとも今のレベルを維持するためには、より高い生産性が必要になりますが、高齢化が進むなかでの生産性向上は、一筋縄にはいきません。
つまり、残念ながらこれからの日本に高度成長を期待することは非常に難しいというのが現実でしょう。先日、ある大学の先生と話をさせていただいた際にも、「日本は歴史上初めて、国が貧しくなっていく過程にあるのではないか」とうかがいました。まさに的を射たお言葉だと思いました。
このように、日本、そして日本企業を取り巻く環境の厳しさがはっきりとわかります。最悪の場合、極東の一小国へと逆戻りしてしまうのではないかと。このような環境下で、この先も持続的な成長をめざすためには、海外、特にアジア・新興国地域の成長力をいかに取り込めるかが重要なテーマとなっていることも頷けます。日本のGDP割合の減少傾向とは対照的に、中国・インドを中心としたアジアの占める割合は非常に高くなっています。これこそが、アジアの世紀、またはアジアへの回帰といわれるゆえんです。そして、これまでとはボリューム感が圧倒的に異なる世界が到来しつつあります。
ただし、皆が手放しでその機会から果実を獲れるわけではないことはあらためて心に留めておくべきです。競争相手は日本企業だけでなく、欧・米のグローバル企業はもちろん、力をつけている各国ローカルの企業も手ごわい競合となっています。また、それなりのカントリーリスクや成長の踊り場も考慮しておく必要もあります。