監査法人・大手VC・証券会社・東証…オルツの「単純な循環取引」を見破れなかった真因 創業者の主導の下、財務責任者もあっさり不正の"中心人物"に
本スキームによる取引は、創業者で元CEOの米倉千貴氏(2025年7月29日に辞任)の指導の下、2021年6月頃から行われるようになっていた。
例えば2022年12月期の全社売上高の91.3%、翌期は91.0%がこのスキームによるものだった。広告費も、同98.1%、同96.7%がスキーム絡み。2021年12月期から2024年12月期の累計では、売上高は約119億円、広告費は約115億円が過大計上されていた。

当然、AI GIJIROKUの有料アカウント数も、公表数値と実態は大きくかけ離れていた。オルツの有価証券報告書によると、2020年12月期に610件だった有料アカウント数は、2021年12月期には1万0700件に膨れ、直近の2024年12月期末時点では2万8699件になっている。が、第三者委の報告書によると、2025年7月時点での有料アカウント数は5170件、そのうち直近でアクセス実績があったのは2236件にすぎなかった。
スルーされた「申し送り事項」
オルツの監査役や、同社に出資していたジャフコやSBIグループなど44社ものベンチャーキャピタル(VC)、主幹事だった大和証券、そして東証はなぜ、この単純な構図に気が付かなかったのか。
生成AIの勃興期だったため、当初は文字起こしツール自体珍しかったのかもしれないが、「文字起こしサービスだけであんなに売り上げがあるのは単純に違和感がある」(IT企業関係者)。一方で、オルツは2023年度には約37.7億円の広告費を使っている。出資者などは日常生活の中で一度でも、AI GIJIROKUの広告を目にしていただろうか。
一般的な感覚を持っていれば、違和感を抱きそうなものだが、報告書では関係者たちが次々と”だまされていく”さまが書かれている。
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