経産省キーマンが語るGX、エネルギー改革の道筋 約20年ぶりに電力需要増加、脱炭素電源確保が急務

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――石油や天然ガスなど化石燃料の行方は?

化石燃料、特に脱炭素経済へのトランジション(移行)期における液化天然ガス(LNG)の確保はきわめて重要だ。LNGはエネルギーの根幹であるだけでなく、とりわけLNGの長期契約はわが国のエネルギーコストの安定化にも大きく貢献してきた。

しかし、脱炭素化に伴い、以前のように20年といった長期契約の締結が難しくなっている。他方で産ガス国にとって、契約の短期化はありがたくない。そうした中で、世界規模でガス争奪戦が起きている。脱炭素化を進めつつ、エネルギーの安定供給も確保していかなければならない。

ヨーロッパの大手エネルギー企業は2050年カーボンニュートラルを掲げつつ、カタールとLNG調達で2053年までの長期契約を結んでいる。日本もそうしたしたたかな対応から学ぶ必要がある。

――脱炭素電源のうちで原子力発電の位置づけは?

脱炭素化の進展とともに、脱炭素電源は次第に足りなくなってくる。私自身、再エネだけでは足りなくなる可能性が高いと見ている。また、再エネ由来の電力だけで脱炭素電源の必要量を確保しようとすると、コストが高くなる。その点でも、原子力は引き続き重要だ。

エネルギー資源を持たない日本にとってのいちばんのエネルギーセキュリティは、エネルギーのポートフォリオをバランスよく持っていること。これがいちばんのリスク対応になる。そういう意味では特定の電源に過度に依存せず、バランスを意識しながらエネルギー源を確保していくことが重要だ。

脱炭素投資推進へ新たな政策も

――原発の新増設については、今の制度では困難だという意見が電力業界などから持ち上がっています。

原子力に限らないが、今後、脱炭素エネルギーへの需要は増えていく。そうなると発電設備や送電線、水素供給のためのインフラなどさまざまな分野での設備投資が必要になる。どれも巨額であるうえ、エネルギー需要が増加局面にある場合には過小投資に陥るリスクがある。その場合、経済成長のポテンシャルが失われることになりかねない。

そこで、投資を促すための政策的な措置が必要になる。これまでも再エネの固定価格買取制度(FIT)や、長期脱炭素電源オークションといった、固定費回収の仕組みを導入してきた。

GX2040ビジョン策定の議論においても、エネルギー基本計画改定の議論でも、脱炭素エネルギー投資が過小投資にならないよう、投資の予見性を持てるような政策を講じていかなければならないという問題提起をしている。取りまとめまでの時間には限りはあるが、何らかの方向感を示さなければならないと考えている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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