経産省キーマンが語るGX、エネルギー改革の道筋 約20年ぶりに電力需要増加、脱炭素電源確保が急務

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――どういうことでしょうか。

はたけやま・ようじろう/1969年生まれ。1992年3月東京大学法学部卒業。同年4月通商産業省入省。経済産業省大臣官房総務課長、商務・サービス審議官、産業技術環境局長などを経て、2024年7月から現職。首席GX推進戦略統括調整官なども併任(撮影:筆者)

3つの例を挙げて説明したい。

1つ目の例として、わが国の基幹産業である鉄鋼業について見てみたい。鉄鋼業では、高炉生産の電炉生産への転換、高炉でも水素還元といった生産プロセスの変革が必要になっている。

いずれも、再生可能エネルギーや原子力、クリーン水素といった脱炭素電源が十分にあるか、そして脱炭素電源を、予見性を持って安価に確保できるかがカギを握っている。それができなければ、鉄鋼業などの基幹産業は国際競争力を持たず、日本では成り立たなくなってしまう。

2つ目として、データセンター投資の重要性について指摘したい。例えば、アメリカのマイクロソフトは向こう2年間にデータセンターだけで日本に4400億円の投資をすると表明している。

これも脱炭素電源がなければ来てもらえない。

電力需要はさほど増えないと見る向きもあるが、逆に脱炭素電源が十分な供給力を持たなければ、データセンターへの投資は増えないかもしれない。それは望ましいことではない。

半導体製造でも脱炭素電源は不可欠

――データセンターが国内にないと、どのような不都合があるのでしょうか。

現在、デジタル分野でのサービス収支の赤字は年間に約5.5兆円に達している。日本では計算能力が足りないことから、海外のデータセンターを一部借りているが、非常にコストが高い。今後もデータセンター需要を海外に依存するようだと、デジタル赤字はあっという間に2桁兆円に膨らんでしまう。貿易赤字とともに2つの赤字を抱え込むことになり、わが国の経済パフォーマンスを大きく悪化させることになりかねない。

――3つ目の事例とはどのようなものでしょうか。

半導体のような戦略物資が挙げられる。半導体も脱炭素電源を用いて生産しなければ顧客に買ってもらえない。GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック<現メタ>、アップル)もマイクロソフトもそうだが、自社排出の二酸化炭素(CO2)をゼロにするだけでなく、調達する部品や素材の生産過程で発生するCO2も含めて排出ゼロの目標を掲げている。

このように脱炭素エネルギーの確保は日本経済にとって死活問題だ。次期エネルギー基本計画策定においてもきわめて重要なテーマになる。

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