舞い戻ってきた「円安」はどこまで長持ちするのか 短期・中期・長期で分けるべき円相場の未来予想図

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1~8月合計のデジタル赤字は昨年の約3.8兆円に対し、今年は約4.7兆円まで拡大している。通年で見た場合、2023年は約5.5兆円だったが、おそらく今年は7兆円台に届く可能性すらある。

すでに日本の貿易収支赤字に匹敵する項目としてデジタル赤字が存在していることは念頭に置きたい。

もちろん、ヒト関連収支(≒旅行収支)も今年は初の5兆円台に達する可能性があるが、互いの持続可能性まで踏まえると、やはり日本から漏れる外貨は今後デジタル分野を中心に増えていかざるを得ないように思えるし、その帳尻は恐らく円安で合わせるしかないように思える

短期では150円台もありうるが1年先はどうか

円相場のイメージについてまとめると、短期的には投機の巻き戻し主導で円安に跳ねやすい(一時的に150円台も)という展開は想定されるが、今後1年程度という中期的な目線に立てば、CFベース経常収支の黒字転化に象徴される需給環境の改善を視野に円安に歯止めがかかりやすい地合いとも見受けられる。

だが、さらに長期的な目線に立てば、現在はサービス収支赤字が拡大しないように「踏ん張っている」という状況に過ぎない。

今後、デジタル分野を中心としてサービス収支赤字が拡大し、経常収支黒字が目減りしていく未来まで視野に入れれば、やはり円相場の脆弱性は構造的に増していると考えるのが妥当ではないだろうか。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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