舞い戻ってきた「円安」はどこまで長持ちするのか 短期・中期・長期で分けるべき円相場の未来予想図

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円安が長期化するには、FRBの利下げ路線もしくは日銀の利上げ路線について、いずれかもしくは双方について「その可能性がついえた」という確信を要するが、この点はまだ確信を持ちえない。現状はあくまで次回会合への期待形成が相場の雰囲気を支配しており、需給環境を冷静に解釈しようという視点が弱いように思える。

照会が多い論点ゆえ、デジタル赤字に象徴される「新時代の赤字」こと、その他サービス収支赤字の現状についても整理しておきたい。

これは経常収支全体から得られるイメージとは裏腹に継続的に赤字が拡大している。

まずサービス収支全体について1~8月合計の数字を整理しておくと、赤字は昨年の約2.6兆円に対して今年は約2.4兆円とわずかに改善している。

デジタル赤字を含むその他サービス収支赤字は約4.1兆円から約5.9兆円へ拡大しているものの、旅行収支黒字が約1.9兆円から約3.9兆円へ倍増していることでサービス収支全体の赤字が限定されているのである。近年の日本のサービス収支ではお決まりの構図だ。

しかし、問題は現状ではなく未来である。

「観光の稼ぎvs. デジタルの出費」は形勢不利

「観光産業が稼いだ外貨で、デジタル産業へ支払う外貨を賄う」という構図が持続できているのはあくまでスナップショットであり、今後も続けられるのかどうかは相当に疑義がある。

人手不足が極まってくる日本において、労働集約的な観光産業が稼得できる外貨はピークアウトする公算が大きい。かたや、資本集約的なデジタル産業へ支払う外貨は社会におけるAI需要などに鑑みれば、恐らく増えていくのだろう。

日本のサービス取引を取り巻く「ヒトvs.デジタル」という構図は現状でもヒトがデジタルに対して力負けしているわけだが、今後ますますデジタルに押し込まれてくる懸念がある。

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