石破新政権にいっそ忘れてほしい「デフレ脱却」 今や国民が求めているのは「インフレ脱却」

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ここで、そもそも「デフレ」という経済現象の定義が極めて曖昧なことが問題になる。デフレからの完全脱却を約束しても、定義が曖昧なので建設的な議論にはならない。筆者は政治の場ではもう「デフレ」というフレーズを使わない方向へ変化を促したほうが良いのではないかと感じている。

2012年以降、「デフレの定義」をあいまいにしたままリフレ政策に邁進したことが、円安やこれに伴う物価高に不平不満を漏らす世論の現状につながっている。

もはや鉄板ではなく反感を買う

アベノミクスが始まった当時における「デフレの定義」は、政府・中銀にとっては消費者物価指数(CPI)のマイナスであり、企業にとっては長年続く円高であり、海外投資家にとっては長年続く株安であったと筆者は考えている。

もはや、これらの意味ではすべて完全脱却が済んでいると言って差し支えない。しかし、「完全脱却」を果たした今、家計部門に残されている経済情勢はインフレ税で可処分所得が目減りするスタグフレーション的な状況である。

2000年代以降、政府・与党はまず「デフレからの脱却」を標榜しておけば間違いはなかった。どのような政権にとっても定番のフレーズであったと言える。

四半世紀が経過し、今やその定番のフレーズは廃れ、国民の反感を煽りかねない意味を含み始めている。この点は石破政権に限らず、為政者は早めに気づいたほうがよい事実に思える。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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