無意識に行動を操られる「ダークパターン」の危険 「妨害」「こっそり」など知るべき7つの悪質手口

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日本も消費者庁や総務省が取り組みを進めており、日本の対応が特別遅れているわけではありません。ただし、詐欺的なものを除いてダークパターンそのものに違法性はないため、国内外を問わず取り締まりが難しく、いたちごっこが続いています。

多くの企業が意図せずダークパターンを作っている

——なぜ、ダークパターンは生まれてしまうのでしょうか?

実は、意図的なケースと、そうでないケースとがあります。例えば、定期購入であることを隠して格安価格で健康食品を販売するのは「こっそり」に当てはまり、意図的なものです。

長谷川 敦士
長谷川 敦士(はせがわ・あつし) コンセント代表取締役/武蔵野美術大学造形構想学部教授
「わかりやすさのデザイン」であるインフォメーションアーキテクチャ分野の第一人者。デザインの社会活用や可能性の探索とともに、企業や行政でのデザイン教育の研究と実践を行う。消費者庁や総務省をはじめとした会議の場や、企業・団体で構成される研究機構の活動などにおいて、ダークパターン問題の提起・啓発にも取り組んでいる
(写真は本人提供)

ただし、ほとんどの事業者は積極的にユーザーをだまそうとしているわけではありません。「会員登録数を増やしたい」「購入率を高めたい」という目的のためにUIを試行錯誤した結果、意図せずダークパターンになってしまうことが多いのです。

UI改善の検証で用いられるA/Bテストでは、AIによるクリエイティブの自動生成も進んでおり、より効果的なデザインを残すサイクルを回すうちにダークパターンばかりが残ってしまうこともあります。

——企業がこうしたデザインを作らないように留意すべきことは何でしょうか。

実は原因となりうるのが、ビジネスのゴール設定、つまり「KPI」です。このことを、事業責任者はしっかり認識しなければなりません。

例えばメールアドレスの獲得をKPIにした場合、現場は何としてでもメールアドレスを集めて成果を出そうとします。その結果ダークパターンを使用してしまったとしても、やめるとKPIを達成できないとなれば、そのまま使い続けてしまうことでしょう。

最近ようやく、ダークパターンが企業のレピュテーションリスクとして意識され始めていますが、改善にはKPIの見直しが必要です。

UIと事業ミッションは無関係だと思われがちですが、事業責任者は事業ミッションがダークパターンを生み出す可能性があることを知っておくべきです。責任者から「ダークパターン対策はできているのか」と投げかけられれば、現場も「実はKPIが問題で」と相談しやすいでしょう。

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