個人情報5ドルで売買、「ダークウェブ」驚きの実態 サイバー犯罪のインフラにもなるネットワーク

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独裁国家では自由な発言のために当局の統制下にない通信手段が必要だ。Telegramは運営者が、暗号鍵を管理しない暗号通信が可能なメッセンジャーである。

開発者はロシアのエンジニアとされていて、イラン、パキスタン、中国などは利用を禁止しており、ロシアでも利用が禁止されていた時期がある。つまり、犯罪者が利用しているからといって、一律に規制・禁止すればいいというものではないということだ。

専門家はセキュリティ対策や情報収集に活用

だが、ダークネウェブやTor、Telegramが合法だからといって、むやみにアクセスする必要はない。とくにアンダーグラウンドのECサイトや掲示板、コミュニティサイトへのアクセス、参加者へのコンタクトは、軽はずみに行っていいものではない。

すぐにウイルスに感染するとか情報が抜き取られるといったことはないが、理由や目的がなければ、わざわざ犯罪者の中に入っていくべきではない。セキュリティの専門家でも、ダークウェブへのアクセスは慎重を期す。

ダークウェブの情報は、時としてサイバーセキュリティに役立つ。ハクティビスト(ハッキングやサイバー攻撃を伴う活動家)や犯罪者コミュニティの情報を調べることで、彼らがどんな攻撃対象に興味を持っているのか、どの企業(国)を攻撃する計画を持っているのかがわかることがある。漏洩した情報がアップロードされている場所、新しいマルウェアの情報を知ることができるかもしれない。

インターネットや実社会の公開情報、ダークウェブの情報を使って、セキュリティ対策に生かすことを「脅威インテリジェンス」といい、大手セキュリティベンダーが対策ソリューションとして展開している。脅威インテリジェンスでの情報収集は、プログラムやAIを使って高度に自動化することがメインだが、研究者が人力でダークウェブなどから情報を収集する場合もある。

ただ、安易に脅威インテリジェンスを行うと、情報が得られないばかりか、報復のサイバー攻撃を受けるかもしれない。また、軽はずみに犯罪者と接触すると犯罪の幇助や教唆の罪を問われる可能性もある。接触方法や入手した情報の利用方法によっては、不正アクセス禁止法、個人情報保護法など関連法に触れる可能性もある。個人はもちろん、企業でも安易に行うべきではない。

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中尾 真二 ITジャーナリスト・ライター

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なかお しんじ / Shinji Nkao

エンジニア、アスキーの書籍・雑誌編集、コンピュータ技術書籍の翻訳や企画出版を行うオライリー・ジャパン編集長を経て独立。現在はセキュリティ、自動車、教育関連のWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。

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