奈良県宇陀市がエストニアと教育を軸に連携、「覚悟」を持って臨む理由 人口2万7000の市と電子国家に共通の「危機感」

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「子どもたちは道を歩いていても『あの看板は場所を変えたほうが見やすいのでは』など、まちのことに関心を持つようになりました。生徒会長選挙に出た生徒の全員が、短期留学の経験者だったという学校もあるほど。彼らの変化には私たちも驚いています」(甲賀氏)

すでに絶大な効果を見せる交流の次の一手は、現地の大学などとの連携による日本人向けの留学プログラム「クレボンアカデミー」の開講だ。これまではエストニア語の講義のみで外国人にはハードルが高かったが、宇陀市との連携をきっかけに英語での講義も実施されることになった。

3年間でロボット工学分野の高度なスキルを身に付け、学士(bachelor)の資格を得ることができる。2025年9月のスタートを目標にしており、すでに市内外でも話題だ。

「まだ本格的なPRをしていないのですが、市民だけ、若者だけを対象にしたアカデミーではないので、近隣の高専生や大人からも問い合わせが来ています。もちろん子どもたちも興味を持っているようで、『英語を勉強しなくちゃ』というモチベーションにもつながっているようです」

今年1月、宇陀市はクレボン・エストニアアントレプレナーシップ応用科学大学・Next innovation OÜとMOUを締結

甲賀氏はさらなるプランも進行中だと話す。

「2025年の入学者がアカデミーを修了する2028年を目指して、クレボンの日本支社を宇陀に誘致する予定です。エストニアで学び、宇陀に帰って来て活躍できるよう、産業振興も含めたサイクルを考えています」

この「サイクル」という考え方も、宇陀市がエストニアから学びたいものの一つだ。甲賀氏は言う。

「エストニアでは、成功を手にした起業家が次の世代に資金とノウハウを再投資する環境、スタートアップや教育へのエコシステムが根付いている。少子化が進む日本ですが、もっと若者や子どもを応援する国になるといいですよね。教育エコシステムのノウハウを私たちも学び、宇陀市から全国に発信していきたいのです」

覚悟を持って始めたプロジェクトというだけのことはあり、視察に終わらない壮大な計画であることがうかがえる。人口3万人足らずの町が抱く夢は大きい。

(文:鈴木絢子、写真:宇陀市提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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