未来に向けて「しなやかな組織」を築く
組織の創造性を高める4つのキーワード 近藤 泰彦(デロイト トーマツ コンサルティング マネジャー)
× 後藤 将史(デロイト トーマツ コンサルティング パートナー)

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ビジネスに携わっていても、誰もが起業家精神に満ちあふれた行動派であるわけではない。そのため組織全体が、新しいアイディアを試し、その良し悪しを素早く学習するマインドを身につけることは、簡単なようで難しい。「任せる」側が強い度胸と明確な目標、目的に合った成果を図る指標という軸を持ち、柔軟な姿勢で現地に任せる。この「任せる」力が本当に備われば、その果実は計り知れないほど大きなものである。

リーダー自身の姿勢とセンスが改革の成否を握る

4つのキーワードを振り返ったとき、「しなやかな組織」へと変革を遂げる成否を分けるものは何か。

それは、経営者を筆頭とした各組織におけるリーダー自身のあり方ではないだろうか。

キーワードをあらためて俯瞰してみると、「組み替える」にしても、「楽しむ」にしても、リーダー自身が軸となる信念や価値観、強い目的意識を持つことが前提となる。その上で、自らが率先して、柔軟な姿勢で前例や既存の枠組みを超えていくことが重要になる。守るべき軸を判断と言動で示し、自らが生き生きと働く。創造性あふれる、イノベーティブな「しなやかな組織」を築けるか否かは、まさに経営者を含むリーダー層の日々の行動にかかっているのである。

もちろん、メンバー1人ひとりも受け身の姿勢で改革を待っているだけでは「しなやかな組織」を築くことは難しい。近い将来には自身がリーダーになることを自覚し、リーダー層の変革を後押しすることが不可欠であることは言うまでもない。

4つのキーワードが示す変化の波とその事例は、昔からどこかにあるテーマでもあり、また今の時点ではまだ少数の例外かもしれない。しかし、こうした企業のソフトな側面では何が「当たり前」かが少しずつシフトし、潮目が変わるとどの組織も似たような取り組みを当然のように実践しているものである。たとえば、育児休業法は1975年に施行され、当時から企業組織と家庭との両立は議論され、少数の実績もあった。しかし、育児休暇をとり職場に復帰するマインドがある程度普通のことになったのは最近のことであり、その空気の変化には、日本の生産人口がついに減少に転じた危機感から、政府が積極的に政策を進めたことも影響している。潮目が変わる前に先行して取り組むか、潮目を見ながら後追いで取り組むか。横並び意識の強い日本企業は後者を選択しがちだが、そういった姿勢では、この先の競争を勝ち抜けるのは難しい。

世界と戦うため、まだまだ日本企業には、できること、やるべきことが多い。グローバルで勝てるハードな組織制度を整えるとともに、個人が生き生きと活躍し日々新鮮なアイディアが生まれるソフトな土壌を育てる。未来の組織には4つのキーワードの特性が当たり前に求められ、その巧拙が変化に耐え未来に生き残る組織とそうでない組織を分ける条件となるだろう。

(photo: Hideji Umetani)

 

参考文献
ⅰ) 株式会社ミスミ ウェブサイト。
ⅱ) 岡田正大「ネット世代の企業戦略 from ビジネススクール――Googleにおける開発組織マネジメント」ITpro。
ⅲ) 株式会社サイバーエージェント ウェブサイト。
ⅳ) MyNewsJapan「リクルート『3年ごとに1500万円のチャンス』新退職金制度で“キープヤング"」2011年2月2日。
ⅴ) 経済産業省 平成24 年度「ダイバーシティ経営企業100 選」。
ⅵ) 入山章栄「MBAが知らない最先端の経営学」日経ビジネスオンライン、2013 年12月24日。
ⅶ) 株式会社リクルートホールディングス ウェブサイト。
ⅷ) 面白法人カヤック ウェブサイト。
ⅸ) ハーバード・ビジネス・レビュー2010年1月号「GE:リバース・イノベーション戦略」。