現代美術の鬼才「アートへの金欲」を拒まない訳 アーティスト・会田誠、市場原理に感じる正直さ
市場には負の側面だけでなくよさも
――会田さんはどのような立ち位置の現代アーティストだと自覚していますか。
現代アートの作家は、大きく2種類に分けられる。1つが、アートマーケットを主戦場としている人々。日本人の作家でいえば、ニューヨークのギャラリーに所属してコレクターなどに作品を販売している、村上隆さんなどはその典型だ。
その対極にあるのが、例えば「ソーシャリー・エンゲージド・アート」というジャンルに属する作家。絵画や彫刻を作って市場で売るというよりは、市民と一緒にワークショップを開いて何らかの社会変革をもたらそうとするアーティストだ。
彼らの活躍の場は、世界中で開かれる芸術祭。ベネチア・ビエンナーレ、ドイツのドクメンタ、日本ならばあいちトリエンナーレといったものだ。著名な芸術祭に選出されれば、それなりにアーティスト・フィーがもらえる。お金儲けのために大切な制作時間を使わず、社会的に意義あることをしよう、というのが彼らのスタンスだ。
僕がどちら側の人間かというと、コマーシャル・ギャラリーに属しているという意味ではマーケット側の作家だ。とはいえ、ここにどっぷりつかっていたいとは思わず、ビエンナーレ的な美術とのつながりもある。
――芸術に価値をつけて売買するアート市場。会田さんが属している現代アートの分野では、買ったアートをオークションで売って利ザヤを得る投資目的のコレクターも存在します。マーケットは、作家にとっては善・悪どちらの存在なのですか。
作家の中には、社会的な善行をするアートこそがよいものであり、アート市場は悪である、と断言する人もいる。僕も、市場には明確に負の側面があると思うが、一方でよさもあると思いながら付き合っている。
基本的に、コレクターもギャラリーも金の欲で動いている。多くのギャラリーが出展する国際的なアートフェアに行くと、露骨に「欲望の渦」のようなものを感じる。ただ、ここにはある種の正直さがある。
――正直さ、ですか。
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