金高騰に凝縮された異常な市場心理の実体 新型コロナ危機の次に来る「インフレ」をも織り込み始めた

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今や「最後の安全資産」とも呼ばれる金(ゴールド)。投資人気の底流にあるのは何か。

正月早々、米国とイランが全面戦争の瀬戸際まで行き、何とか回避されたと思ったら今度は中国発の新型コロナウイルスとの「戦争」を世界各国が迫られている。欧米を含む地球規模の感染拡大は、NYダウが2月27日に史上最大の下げ幅を記録するなどリーマンショックをも彷彿させる世界同時株安につながった。

こうした中で騰勢を強めたのが金(ゴールド)だ。国際指標の金先物価格は2月下旬にかけ1トロイオンス(約31グラム)1600ドル台に乗せ、7年ぶりの高値をつけた。さすがに直近では利食いや株の損失穴埋め目的の換金売りで一服商状だが、米ゴールドマン・サックス証券が金を「最後の安全資産」と呼び、1年後の予想価格を1800ドルへ引き上げるなど強気論は根強い。そこには、昨今の国際金融市場を揺り動かすあらゆるファクターが凝縮しているように思われる。

金価格は2月下旬までの3カ月で14%上昇した(撮影:梅谷秀司)

まず新型ウイルス感染拡大に伴う世界経済の失速懸念の高まりだ。米国では昨年後半に米中貿易摩擦の景気リスクに対応して3連続の予防的利下げを行った米連邦準備制度理事会(FRB)が、一気に0.5%の緊急追加利下げを決断するとの観測が浮上。米10年物国債利回りは2月末に1.11%と過去最低を記録した。日本やドイツの長期金利はマイナス幅を一段と拡大させている。

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