「“好き嫌い”が経営者を内部から突き動かす」と説く楠木教授に、ベスト経営者を選んでもらった。
現代の日本を代表するベスト経営者は誰か。編集部からそう問われたが、前提として伝えておきたいことが2つある。
1つは、優れた経営者の条件は経済活動が拠って立つ基盤原理が変わらない限り、変わらないということだ。私の認識では、それは時代によって大きく3つに分かれる。かつて「伝統」が人間の行動や判断の拠り所だった時代。その次が、王様や大名などの「指令」を聞けばよかった時代。そして、民主主義と市場メカニズムが支配する現在は、要するに一人ひとりが好きにやってよい時代。その範囲で優秀な経営者の条件は変わらない。松下幸之助や小林一三といった昭和の名経営者は、令和の時代でも変わらず名経営者だろう。
もう1つ伝えておきたい前提が、優秀な経営者の条件は一般化できないことだ。経営者は個別企業の成果を出すのが使命で、それは特殊解。別の会社で同じ成果を出すとは限らない。
戦略的意思決定とは、「よいこと」と「よいこと」の間の選択であり、善しあしは基準にならない。あっさり言えば経営者の“好き嫌い”に依存するものだ。今回は私の好き嫌いを基準に、“好き”な経営者を挙げた。
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