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「バランスシート不況論」が注目を集めるワケ リチャード・クー氏インタビュー全文版

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1954年神戸生まれ。1976年カリフォルニア大学バークレー校卒業、FRB(米連邦準備制度理事会)のドクター・フェローを経て、1981年アメリカ・ジョンズ・ホプキンス大学大学院経済学博士課程修了。同年ニューヨーク連邦準備銀行入行後、1984年野村総合研究所入社。著書に『良い円高 悪い円高』『「陰」と「陽」の経済学』『デフレとバランスシート不況の経済学』など

「バランスシート不況論」は海外中銀で引っ張りだという。『「追われる国」の経済学』を上梓したクー氏に日本や米国が直面している経済の課題について話を聞いた。

 

※本インタビューは週刊東洋経済8月3日号掲載スペシャルインタビュ-、海外中銀で引っ張りだこ、 「クー理論」が受ける理由のロングバージョンです。

 ──金融政策への依存に対し批判を続けています。背景には、バブル崩壊後の日本を基としたバランスシート不況の考え方があります。

私も最初は中央銀行の役割は非常に大きいと考えていた。若いときにFRB(米連邦準備制度理事会)のエコノミストとして働き始めたのもそのためだ。だが、1990年代の日本を見ていると、金利をゼロにしても何も起きない。大学で学んだ経済学と全然違う。最終的に資金の借り手がいないのではないかと考えるようになった。

──バランスシート不況論に対しては批判もありました。

何しろ経済学の前提を否定したから。経済学では、借り手は絶対に現れるという前提になっている。実質金利さえ十分に下げれば、借り手は必ず出てくると。民間企業の利益を最大化するという考え方も、有益な投資機会が多数あり、企業財務も健全で資金を借りることができるという前提があるから成り立つ。だが、どうもその前提は満たされていないのではないかと私は問題提起した。

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