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山極壽一京都大学総長が語る「日本の大学の危機」 「ランキングはお金を使えば間違いなく上がる」

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山極壽一(やまぎわ・じゅいち)/人類学者・霊長類学者。1952年生まれ、87年京都大学理学博士。2014年から現職。ゴリラ研究の世界的権威であり、『暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る』『「サル化」する人間社会』など著書多数。(撮影:今井康一)

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日本の大学の国際的な地位低下に歯止めがかからない。世界の大学ランキングでは中国などアジア勢の躍進に遅れ、論文の本数やシェアも低迷している。京都大学の山極壽一総長はこういった日本の大学と研究者の状況に対し、声高に危機感を指摘してきた。何が問題なのか、打開のカギは何か。
(注)週刊東洋経済掲載のインタビューに加筆。

順位とお金の関係を政府は理解していない

──国立大学法人化(2004年)から一連の大学改革が続いています。しかし論文数などでは日本の大学の研究力は低下していますし、政府が目指している「世界大学ランキングトップ100に10校」にも結果が出ていません。少なくともランキングについては、この間に大きく順位を上げた学校が世界に存在する以上、達成するための手段、つまり政策に問題があったのでは。

ランキングについて言えば、目標を達成する方法も、目標そのものも間違っている。順位を上げるのは、実はすごく簡単です。お金を使えば間違いなく上がる。これは紛れもない事実です。

例えばサウジアラビアのある大学が短期間で順位を上げたことがありました。米国の優秀な研究者を何千万円という給料を払って集めた結果でした。それも引き抜いたわけではなく、クロスアポイントメント制度(研究者が複数の大学・研究機関などの職員として働く制度)を適用して非常勤教員として連携研究者にしたのです。研究論文を発表する際に所属先をこの大学にすることを条件に、年に2~3週間だけサウジで研究をすればよい。これであっという間に数学科のランキングで世界のトップ10に入りました。この例はお金を使って世界中の優秀な研究者を集めれば順位が上がることを端的に物語っています。

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