大国が仕掛ける大学戦争の最先端を、「中国のシリコンバレー」深圳から独占リポート。
ゲノム編集を施した受精卵から、双子が誕生した──。昨年11月のこのニュースを覚えている人は多いだろう。中国人科学者・賀建奎氏が発表し、世界中から激しい批判を浴びた件だ。ゲノム編集は安全性が確立しておらず、生命倫理の問題もはらんでいる。問題を受け世界保健機関(WHO)がゲノム編集研究の国際的な管理に動くなど、今も学術界と政策関係者には余震が続く。
賀氏が所属していた大学(問題後に辞任)は、南方科技大学(南科大、サステック)という。中国・深圳市が2011年に設立した新設校だ。賀氏はこの研究を学外で行い、大学には報告していなかった。学術界にも南科大の責任を問う声はない。それでも注目すべきは、賀氏がこの大学の看板的存在だったことだ。米スタンフォード大学の博士研究員だったが、最年少副教授として迎え入れられた彼は、世界最高水準の研究を目指す南科大のアイコンだった。
そして南科大は、賀氏以外にも輝かしい経歴の研究者を集め、世界の大学競争で着実に頭角を現している。英タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)が毎年発表する世界大学ランキング(約1200校)で、南科大は昨年初めて301~350位の順位帯に登場。大阪大学に迫るポジションにいきなりつけた。破竹の勢いで伸びる新興大学の実態を知るために、本誌は日本メディアで初めて南科大に独占取材した(取材は18年10月に実施)。
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