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日本独自のボーナス制度は役割を終えたのか 長期の業績向上には月例賃金で報いるのが筋

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【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

冬のボーナスの時期が近づいてきた。人々にとって関心の高いテーマだけに、すでにいくつかの機関が調査結果を発表している。昨年比の伸び率が注目されるが、大手に限れば1%程度の微増という結果が出ている。大手企業のボーナスによる利益還元も一段落し、昨年に比べて微減を示す調査もある。政府が来年の春闘に対して並々ならぬ関心を示す中でのボーナス水準としては、意気が上がらない結果だ。ボーナスという制度そのもののあり方について考え直す時期かもしれない。

歴史をさかのぼれば、ボーナスの仕組みは、すでに明治期の大企業に見られるようだ。その多くは職員身分に対する功労褒賞的なもので、企業の利益分配の側面が強かった。その後、支給対象が工員を含めた全社員に拡大するとともに、団体交渉の下での労使決定事項とされたが、企業利益の配分という基本的な側面は受け継がれていった。

そのボーナス制度が世界的な脚光を浴びたのは、日本企業のプレゼンスが際立った1980年代だった。特に米国の経済学者ワイツマンが著書『シェア・エコノミー』で、スタグフレーション克服のために売上高に応じた伸縮的な賃金制度を提唱するとともに、日本のボーナス制度を好意的に評価したことが大きかった。企業の利益が低下する不況期にはボーナスが縮小することで雇用コストが低下し、雇用の安定が達成されるという日本型の賃金調整は、当時高失業にあえいでいた西欧諸国にとって魅力的であったに違いない。

確かに、ボーナスが日本の賃金の伸縮性を高めたことは間違いない。近年で最大の不況はリーマンショックだ。2008年から09年にかけて大卒男性の月例賃金の低下幅は2%だったが、その間ボーナスは15%も下落した。ボーナスによる調整がなければ、日本の失業率はより高い水準になったと思われる。

だからといって、企業利益の還元はすべてボーナスで行うべきだという考え方は、必ずしも正しくない。ボーナスは退職金や社会保険の算定に入らない給与の支払い形態であり、基本的に臨時的な色彩が強い。

よって、リーマンショックのような一時的なショックに対してはボーナスを増減させて対応し、比較的長期にわたる企業業績の向上は、月例賃金に確実に反映させていくべきだろう。後者のような賃金の上昇部分は、政府が期待するような国内消費の増大に結び付きやすいため、景気に対するよい効果も期待できる。

ただし、そうした方向に進むことは、月例賃金の企業間格差を拡大させる。その結果、従来よりも企業業績による差が目立つようになることから、業績の悪化している企業にとって人材確保がより難しくなるといった問題が生じるかもしれない。しかし、長い目で見ると、企業業績はさまざまな要因によって変化するものであり、業績の悪化していた企業が復活を遂げる例は枚挙にいとまがない。よって、格差拡大に対しては、それほど神経質になる必要はないように思われる。

不況期に賃金伸縮性をもたらしてきたボーナス制度の存在意義は今でも失われていないが、企業業績の変化をどのように月例賃金とボーナスに適切に反映させていくかについては、検討すべきことが多いように思われる。労使による活発な議論に期待したい。

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