力強い雇用情勢を受けてFRB(米国連邦準備制度理事会)は12月の利上げ実施に傾いたようだ。失業率は5%まで低下し、完全雇用の状況に近いとの認識がコンセンサスとなっている。加えて賃金上昇が明確になったことが背中を押したのではないか。9月に利上げを見送った最大の理由である海外情勢や金融市場の混乱が米国経済へ与える悪影響への懸念も現実のものとならなかった。
市場は12月利上げを織り込み、米国の長期金利は大きく上昇した。金融政策を反映しやすい2年債利回りは0.9%に迫った。足元のゼロ金利を出発点に、3カ月に一度の0.25%の利上げペースと考えれば2年後の政策金利は2%。平均値はおおむね1%であり市場はそこまでの利上げを織り込んだといえそうだ。
ドル金利の上昇はドルを全般的に押し上げた。ドル円相場は1ドル=123円台を回復。利上げ観測が後退するとは想定しがたいため、米長期金利がドルを支える展開は今後も続くだろう。これで120円を割り込む可能性は小さくなったとみられる。
利上げは漸進的
一方、米長期金利は、相応に利上げを織り込んだだけに、ここからは実際の利上げによって確実に足元の金利が底上げされなければ、さらなる上昇は難しい。あるいは今後の利上げペースの織り込みが加速しなければ、大きく上昇することはなさそうだ。
この点についても当局者は市場にヒントを与えている。利上げはあくまでも過度な金融緩和の修正であり、緩和的な金融政策は続き、利上げが漸進的であるとしている。その結果、ドル金利上昇は緩慢であり、ドル上昇も緩やかということになる。
ドル円相場についてはほかにも上昇を抑制する要因がある。一つは米国株の上値の重さだ。このところ米企業業績にはドル高の悪影響が見られる。利上げが企業にとって金利コストの上昇となる懸念もあろう。また長期金利の上昇は相対的に株式の魅力を後退させる。ドルは米国株高・長期金利上昇の組み合わせのときが最も強いが、前者を欠く状況が続くと想定される。
もう一つは日本銀行の追加緩和の可能性が一段と小さくなったとみられることだ。ドル高円安が進んだことによる日本経済への景気刺激的な効果を踏まえれば、あえて難しい大胆な量的緩和のさらなる拡大に踏み切る状況にはない。また政府のスタンスも、国内的には、消費増税による家計負担の増大を考えれば円安による物価上昇は避けたいところだろう。対外的には、TPP(環太平洋経済連携協定)締結に向けた流れの中で過度な円安を招くことは望ましくないという面もある。その結果、円安のエンジンも弱い状況が続きそうだ。
想定されるのは緩やかなドル高円安の継続であり、早期の1ドル=125円到達はさほど簡単ではないとみられる。
リスクシナリオとなりうるのは中国情勢の変化、あるいは市場の中国に対する見方の変化である。中国経済の先行き不透明感は8月にグローバル市場にショックを与えた。現在もダウンサイドリスクを織り込んだ状況とみられる。
逆にいえば、仮に楽観的な見方が台頭した場合には市場でリスク選好が強まる可能性がある。株価はグローバルに押し上げられ、商品市況は回復、新興国市場への懸念も緩和し、為替市場では円安が進みやすい状況となる。こうした状況が到来するにはなお時間がかかるが、来年の半ば以降には留意が必要だろう。
来年のドル円相場も底堅く上値をうかがう展開となろう。しだいにレンジを切り上げ、1ドル=125円中心に推移すると想定される。ただし130円はなお遠いのではないか。






















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